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内容説明
マツリゴト、ヲサム、イキホヒ、シロシメス……。権利、権力、自由、統治……。日本人は政治にかんして、なにを、どのようにとらえ、どう意識してきたのか。古代から近代まで、日本語として日常的に使われてきた「政治のことば」の用例を追いかけ、日本政治の深層に潜む意識とその構造を暴き出す。隣接分野に大きな影響を与えた先駆的研究。(講談社学術文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
21
1984年初出。奈良、平安期の権の用法で特徴は批判、非難的文脈で用いられることが多い。専権、擅権、権威、権勢を誇ㇽ、募ㇽ、仮ㇽ、独擅ス(95頁)。『歎異鈔』においては本願による摂取不捨の普遍性が強調され、『教行信証』等では真実信心への勧奨が眼目(168頁)。日蓮は初期、仏教は必ず国に拠て之を弘むべしといい、貧富の差などを予め細かく知った上で伝法すべきだと説いていた(171頁)。今や創価学会の人は長い者に巻かれているけども。『立正安国論』で国の字の大半をくにがまえの中に民と表記していたという(176頁)。2014/12/26
chanvesa
19
「『統治』なる語の歴史的含意が持つ一種の呪縛力(269頁)」は、違憲立法審査権における統治行為論の背景として書かれているが、昨今の集団的自衛権の法案をめぐる「司法」の状態を想起させる。「高度の政治性」は司法の対象外といういびつな三権分立は、権力の「聖性」とつながるかのようだ。「シラス・シロシメスの主語が神々と天皇にほぼ限られ、支配の正当性を表す(248頁)」一方、「『統治権』総攬者が政策…および各機関に実質的に関わることが少なかった(265頁)」ことは、無責任の体系につながるとは言えないだろうか。2015/11/03
かやは
7
言葉の使われ方を探ることで、物事の関係性を知る。言葉の変移を辿ることで、歴史を知る。古文や漢文が訳されずにそのまま引用されているので、とても読み進めにくかった。が、巻末の解説がとてもわかりやすくて、なんとなく著者の言いたいことは掴めた。2013/02/18
さとうしん
3
古代の「ヲサム」「マツリゴト」から近現代の「統治」「権利」まで、日本語の政治に関する語彙を追うことによって、日本の為政者の政治に対する意識を探っていく。保立道久氏の解説にある通り、日本では「権利」という言葉に恣意的な利益の主張という悪いニュアンスが込められ、それと対になる「義務」が正しい務めというニュアンスが込められ、現代でも「権利には義務が伴う」などという言葉が一種の脅し文句として通用している状況からすると、政治に対する意識の変革はまず「名を正す」ところから始めるべきなのかもしれない。2015/11/07