内容説明
経済不況、雇用の流動化、新自由主義の台頭、敗戦後五十年、インターネットの普及、趣味の多様化-「失われた十年」として記憶される一九九〇年代の一面的な理解にあらがい、浜崎あゆみ、アイドル、『セーラームーン』『スワロウテイル』、SF・サイコ小説、神戸連続児童殺傷事件などを読み込みながら、この時代がはらんでいた可能性をすくい上げる。
目次
序 章 失われざる十年の記憶――「九〇年代」をつなぎとめるために 鈴木智之
1 構造転換の時代としての九〇年代
2 胎動する、複数の九〇年代
3 九〇年代はいつ始まり、いつ終わるのか
4 想起の文脈としての現在
第1章 郊外空間の反転した世界――『空中庭園』と住空間の経験 佐幸信介
1 表象としての住宅
2 郊外と「住まわせる論理」
3 郊外または反転した世界
4 性愛の空間としての郊外
第2章 夢の跡地に見た夢は――『スワロウテイル』の近未来都市 松下優一
1 「円都に住む円盗たちの物語」
2 「円都」の風景
3 「円都」を想像する九〇年代
第3章 侵食する怪物――サイコ・ホラー的想像力と『CURE[キュア]』 加藤 宏
1 サイコ・ホラーの二つの側面――専門知による秩序回復と怪物の侵食
2 『CURE』
3 物語の構造化のパターン分析
4 見慣れた世界の危機と自己のなかの他者への変身
第4章 アレゴリカルな暴力の浮上――「酒鬼薔薇聖斗」と物語の条件 鈴木智之
1 アレゴリーの浮上
2 二つのテクスト――犯行声明と事件メモ
3 生きているものの感触
第5章 偽史への意志――歴史修正主義と『五分後の世界』 山家 歩
1 「自国の正史」と偽史への意志
2 『五分後の世界』と修正主義的欲望の脱構築
第6章 銀水晶に解放された関係性――美少女戦士セーラームーンに欲望するファン 小林義寛
1 セーラームーンのテクスト
2 セーラームーンのファン・フィクション
第7章 彼女たちの憂鬱――女性アイドル“冬の時代”再考 塚田修一
1 AKB48という現在
2 “アイドル”殺害事件
3 アイドル“不遇の時代”
4 3Mの格闘
5 モー娘。という偶然
第8章 「居場所」をめぐって――浜崎あゆみに節合する時代の言葉 西田善行
1 「女子高生の教祖」「コギャルのカリスマ」――安室奈美恵との連続性と切断
2 「アダルトチルドレン」「トラウマ」――「私のココロ」の問題から見る浜崎あゆみ
3 「ヤンキー」「格差社会」――ゼロ年代的言説空間から見る浜崎あゆみ
あとがき 西田善行
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KA
hiratax
女神の巡礼者