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内容説明
多くの人が福祉社会を志向しているにもかかわらず、それを支えるはずの行政への不信が蔓延している。本書では、目まぐるしく変わる政治状況を横目に見ながら、官僚制批判のさまざまな連関が辿られていく。トクヴィル、カフカ、ハーバーマス、シュミット、アーレントら幅広い論者が呼び出され、ウェーバーの官僚制論が現在との関連で検討される。官僚制と戦う強いリーダーが待望される現実と対峙する鋭利な政治思想史。
目次
第1章 リヴァイアサンとロマン主義(概念の成立の遅さ
オイコスと近代 ほか)
第2章 デモクラシーと官僚制(ウェーバーの時代
ロベルト・ミヘルスとデモクラシーの逆説 ほか)
第3章 「正当性の危機」から新自由主義へ(ルソーとウェーバー
官僚制の正当性 ほか)
第4章 「鉄の檻」以後のカリスマの問題(近代の時代診断とカリスマへの期待
日本官僚制論の構図 ほか)
第5章 読み直されるウェーバーの官僚制論(グローバル化のなかで
比較類型論の復権 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
獺祭魚の食客@鯨鯢
39
「お役所仕事」と揶揄する者ほど公務員のミスに対して容赦ない。規則を曲げるわがままが通らないと怒鳴り出し無理を通そうする。 困っている人間の立場を思いやる「恕」の気持ちが薄くなっている。 「繁文縟礼」という官僚制の悪癖がある、相手を困らせるためにわざと繁雑な規則を持ち出してダメ出しする。公務員叩きのため些細なミスを追求する風潮への防御策としてこれを援用する例もある。 野党の品位ない物言いに官僚たちは「貝になる」しかないかもしれない。彼らの過酷な労働環境へのねぎらいの報道はない。 2021/06/03
おさむ
35
1990年代以降、日本でも高まっている官僚制批判を政治思想史的アプローチで分析した論考。結論はこうした批判は普遍的で、新自由主義により官僚制の正当性が揺らぎやすい。官僚制と戦う強いリーダー、カリスマに期待するのは時代錯誤で危険、というもの。なるほどたしかに小泉さんや橋下さんはその典型のようです。安倍さんは一次政権での失敗を教訓に今は直接対決姿勢はとってませんが、本性は同じように感じます。2016/05/29
さきん
16
多くの人が福祉社会を志向しているにもかかわらず、それを支えるはずの行政への不信が蔓延している。本書では、目まぐるしく変わる政治状況を横目に見ながら、官僚制批判のさまざまな連関が辿られていく。トクヴィル、カフカ、ハーバーマス、シュミット、アーレントら幅広い論者が呼び出され、ウェーバーの官僚制論が現在との関連で検討される。官僚制と戦う強いリーダーが待望される現実と対峙する鋭利な政治思想史。官僚制を批判するだけでは意味が薄く、民主主義において、かつ一定規模の国においては官僚の果たす役割は大きいと理解した。2015/09/29
tolucky1962
12
官僚に対する批判が強い今、目を引くタイトルである。とはいえ、官僚への批判は普遍的なもののようである。 官僚は合理的で間違いがないという前提が非合理を押し付けているという。 一方、官僚と戦う強い政治的リーダーを期待するのも時代錯誤とする。 官僚の特徴を理論的にまとめているが、その正当性の根拠である文書を改ざんするのは官僚としての最も基本を逸脱していることは確か。 2018/06/02
Saiid al-Halawi
9
20世紀を超えてウェーバーを今日の政治思想の潮流に即して読み直してみようという試み。「(新自由主義的な政治家の)政策内容が政治家のキャラクターを規定するだけでなく、政治家のイメージが新自由主義的な政策を呼び寄せもする。…中略… 原理や強さを求めるタイプの政治家と新自由主義的な政策の間には、必然的な結びつきはない。それでも、両者の間には一定の選択的親和性が確認できるのである。」p.1162013/05/16