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内容説明
カカオは原産地の中米では飲み物であると同時に薬品であり、貨幣にもなった。ヨーロッパに到来したときも、この珍貴な実の食用について激論が交わされたが、一九世紀にはココアパウダーや固形チョコレートが発明・改良され、爆発的に普及する。イギリスの小さな食料品店だったロウントリー家もまた、近代的なチョコレート工場を作り、キットカットを開発、世界に販路を拡大するが…。ヨーロッパ近代を支えたお菓子の通史。
目次
序章 スイーツ・ロード旅支度
1章 カカオ・ロードの拡大
2章 すてきな飲み物ココア
3章 チョコレートの誕生
4章 イギリスのココア・ネットワーク
5章 理想のチョコレート工場
6章 戦争とチョコレート
7章 チョコレートのグローバル・マーケット
終章 スイーツと社会
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gotoran
54
冒頭の写真:産業革命後のチョコレート工場、17世紀の英国のコーヒーショップ、チョコレートやココアの広告、パッケージなどに眼を奪われつつ本文へ。かつて苦い薬だったカカオが、欧州に渡り、砂糖と混ざり合ってチョコレートになるまでの経緯が描かれる。カカオの歴史から奴隷貿易、産業革命、経済のグローバル化を読み解く。チョコレートという身近なものから、その歴史とともに世界史をも知ることができる良書。英国ロウントリー社のキットカットの青いラッピングペーパーに纏わるエピソードも面白かった。2018/11/12
Miyoshi Hirotaka
47
今では受験生の縁起担ぎの定番になったKit Katだが、ここに至るまでには、長い歴史がある。原産地の中米では飲み物、薬、貨幣として使われていた。高価、少量生産のビジネスモデルはヨーロッパ到来後も引き継がれたが、19世紀にはココアパウダーや固形チョコレートが発明、改良され、爆発的に普及。産業化に貢献したのは、英のロウントリー社。社会学者のウェーバーが資本主義精神形成の源としたプロテスタント的禁欲が顕著なクエーカー教徒の集団。Kit Katには大航海時代の重商主義が近代資本主義に変容した歴史が詰まっている。2014/06/11
ホークス
46
チョコレートを最初に量産化したのはイギリスで、庶民が長時間労働の合間にエネルギー補給に使った。それまでアルコールで補給していたというのだから凄まじい。現在イギリスにチョコの自販機が多いのも、この頃の名残りだと言う。カカオからチョコレートに至る製造工程には、個性を発揮し易い複雑さがあり、専門店がやって行ける理由が分かった。本書は「世界史」と言いつつ、後半は英国ロウントリー社(キットカットを生んだ)にスポットを当てている。 幅は狭いが、生々しい社会史、産業史として興味深く、人間の普遍的な欲望と良心を感じられる2018/03/14
著者の生き様を学ぶ庵さん
43
イギリス留学経験のある都市社会学の教授が描くチョコレートの世界史。砂糖の歴史と同様に奴隷貿易の過去が暴かれるが、それだけでは終わらない。カカオが薬品だった時代、薬局の化学知識とクエーカー教系の菓子会社の活躍により、カカオは今日のチョコレートに変わる。クエーカー教の奴隷制廃止への貢献、クエーカー系のロウントリー社の労務管理など社会学っぽさを踏まえ、ロウントリー社のキットカット誕生話がクライマックス。戦時中の物資不足を背景に赤と白から青にパッケージ色を変えたこぼれ話は読んで良かった。2016/11/05
リキヨシオ
33
甘いお菓子の代名詞チョコレートの誕生の歴史が意外で面白い!チョコレートの原料カカオ豆には香りと風味があり、特に風味はポリフェノールによる苦味、渋みであり、発酵により苦味渋みが和らぎ酸味がでる。チョコの甘さは砂糖と甘味料が加えられる。カカオの主な産地はガーナ、エクアドル、べネズエラ、トリニダード。マヤ、アステカ社会では神々への供え物や貨幣などに使われ、16世紀後半大西洋三角貿易によりカカオと砂糖がヨーロッパに伝わりカカオを加工して飲む習慣が始まりやがてココアになる。固形チョコレートは1847年に誕生する!2015/09/07