内容説明
世界は多元的であるがゆえに一つである。われわれの思考、言葉と表現の生まれた場所とは!? 近代思想史を斬新に塗りかえる画期的論考。
目次
第1部 神秘の薔薇(新世界への羅針盤 美しき存在 バベルの図書館 神秘の薔薇)
第2部 霊性と曼陀羅(霊性と曼陀羅 オン・ザ・ロード 天界と地獄 場所と産霊 迷宮のなかの両性具有者、エルキュリーヌ・バルバン)
補遺 もう一つの視点から(場所と産霊―西田幾多郎と折口信夫の「身体」 石が語る―南方熊楠「燕石考」の神話論理 ハイデガーからスフラワルディーへ)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅん
11
日本近代思想をシャルル・フーリエの見た「アメリカ」と、エマヌエル・スウェーデンボルグの神学から始める。ヨーロッパとアメリカの相互作用から生まれた科学と宗教の交差思想(それは俗にオカルティズムと呼ばれる)が、列島国(特に熊楠、大拙、西田、折口の四人)とも相互作用を起こしていたことを「近代」の特徴とするのが本書の立場。澁澤龍彦の衒学性を大きな見通しへのバネに活用した本、という印象を受ける。図書館を特権的な場所として扱う「図書館派」のような系譜を感じる。ブックガイドとして優れているのではないか。2021/12/22
NагΑ Насy
7
図書館。南方熊楠と鈴木大拙、明治の知の巨人と、アメリカへわたった神智学、そこを介しての仏教の受容。懐胎した仏教から生まれたケルアックのオンザロード。思想というかなかばフィクションとしては楽しめる。翻訳を意図的にねじ曲げてる感じが引っかかる。2014/11/26
ハチアカデミー
5
B 類似(アナロジー)と照応(コレスポンダンス)をキーに、フランス・アメリカ・日本の近代を繋ぐ論考。近代日本思想史と銘打っているが、本書の底に流れているのは、安藤氏のボルヘスへの愛である。アメリカは西洋各国の多様な価値観や思想、宗教が入り交じる国であるとして、バベルの図書館的な「場」として捉えられている。そこから始まった近代が、日本に移植された過程が、手を変え品を変え、描かれる。タイトルと祖語を感じることもあったが、内容は非常に刺激的。乱暴に類似すれば、中沢新一と佐々木中の中間点といったところ。2012/04/25
メルセ・ひすい
4
14-12 赤15 元祖は18世紀の西欧の神秘主義思想家スウェーデンボルグ様。。霊的体験の著書から米国の思想・社会主義運動へ。エマーソン、ジェイムズ兄弟…黎明期の宗教哲学そして…心酔した若年の鈴木大拙…日本生態学の始祖・粘菌の南方熊楠様は当時、大英博物館。この概念は盟友・西田哲学⇒柳田國男、折口信夫へ。近代日本思想史のなかからアジア主義の大川周明にも分岐する。近代思想史のオリジナル鳥瞰書です。現代人を規定している「思想」を、近代日本に独創的な成果をもたらした人々の苦闘の軌跡から考える。拝(+_+)2010/10/31
koji
3
本年の収穫の一冊です。スウェーデンボルグ(コレスポンデンス)とシャルル=フーリエ(アナロジー)から派生する神秘・超越主義がエマソン、ジェイムズ、パースに受け継がれ、ユテリナリズムとアメリカルサンスとして開花します。一方日本では、同じスウェーデンボルグから、南方熊楠、鈴木大拙を経て、場所(西田幾多郎)と産霊(折口信夫)として結実し近代日本思想を形成します。そして、現在読書中の「ポケモンと菊」で、実は日本のポストモダンもこの流れに乗っていることが分かりました。(別のペンネームで書いたものをkojiに移設)。2010/10/30