内容説明
明治以降、夥しい数の日本人論が刊行されてきた。『武士道』『菊と刀』『「甘え」の構造』などの本はなぜ書かれ、読まれ、そして好評を博すのか。そこには、私たちを繰り返し襲う「不安」がある。欧米文明に遭遇し、戸惑う近代日本人のアイデンティティの不安の在処を抉り出す。本書は、日本人論の総決算であり、150年間の近代日本の物語でもある。(講談社学術文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Shin
17
何年も前、留学から帰ってきて〈自分の日本人としてのアイデンティティ〉というものが分からなくなり、いわゆる「日本人論」を読みあさった時期があった。この本は「日本人論・論」とも言うべき立ち位置から書かれていて、明治維新から戦後にかけて、なぜ日本人には〈日本人論〉が必要とされてきたかが論じられている。まさしくアイデンティティが揺らいだ時に日本人論が求められるのであり、自分もまさにその動機でこの類の本を求めていたことが再確認されて我ながら苦笑する。ただ少し、自分の立ち位置もメタレベルに移った気はする。2014/06/22
アメヲトコ
9
なぜ日本で「日本人論」が求められるのか。『武士道』から『敗北を抱きしめて』まで、著名な日本人論を取り上げて読み解き、その背景にあるものを考察した本。アイデンティティの不安を鍵とする立論は明快で分かりやすいですが、ちょっと分かりやすすぎる気もしないでもない。そのあたりはテレビ用ゆえか。2019/03/22
還暦院erk
4
図書館本。斎藤美奈子さんの本に出ていたのをきっかけに借りた。結構時間をかけて読了。語り口はわかりやすいが情報量が多くて…近現代史の知識が無いのでキツイの(泣)。やはり、既存の社会評論の主だったものは読もうと試みなければなぁ、と痛感した。「名前だけは知ってて未読」の本を巻末年表コピーしたから、これからチェックしなければ。いっぱいあるんだよこれが。2017/06/05
かやは
4
過去の日本人論はどのような時代背景から生まれたものか、日本人論が必要とされるわけはなにか、が書かれている。悪しき風習と思われるものが、何故今でも続いているのか。それの有用性を考えてみる。日本という国は、個人にとっては生き抜くい部分もあるかもしれない。しかし国としては非常に壊れにくく、循環する社会になっているんだな、と思った。今までは対西洋の日本論だったが、これからは対亜細亜となっていくようだ。2013/01/30
Kazuyuki Kuroki
3
ベネディクトの『菊と刀』を読んだとき、「菊って天皇家のことじゃなかったのか!」と驚いたことを思い出す。日米戦争のときに政府がベネディクトに命じて書かせたものなので、てっきり菊とは天皇家を指すものだと人は思っているのである。そのことがこの本では指摘されている。同様の誤解がある本として、中根千枝の『タテ社会の研究』についても言及されている。中根が比較対照としたヨコ社会とはインドの社会であって、欧米白人の社会ではない、というものだ。中根のこの著述については、不勉強にして読んでいないため、私はこの通りの誤解をして2017/05/09