- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
キリスト教にとって大切なのは、身体ではなく精神、肉体ではなく霊魂ではなかったか。しかし、キリストの身体をめぐるイメージこそが、この宗教の根幹にあるのだ。それは、西洋の人々の、宗教観、アイデンティティの形成、共同体や社会の意識、さらに美意識や愛と性をめぐる考え方さえも、根底で規定してきた。図像の創造・享受をめぐる感受性と思考法を鮮烈に読み解く、「キリスト教図像学三部作」完結篇。図版資料満載。
目次
第1章 美しいキリスト、醜いキリスト
第2章 パンとワイン、あるいはキリストの血と肉
第3章 肖像と形見
第4章 キリストに倣って(イミタティオ・クリスティ)
第5章 愛の傷
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヤギ郎
8
聖書読解というよりも、絵画読解、図像学に近い内容。といっても、図像の読解をするにあたり、しっかりと聖書のテキストにも触れているので読みごたえがある。キリスト絵画の知識、イエス・キリストにまつわる薀蓄が収められているので、宗教画を見に行く機会があれば、一読するとよい一冊だと思う。2017/07/10
蛸
7
「キリストの身体」というイメージ(視覚的なものからテキストにおけるものまで)を出発点に、そこに反映された西洋の精神を考察する一冊。身体を精神と対比させ、前者に価値を置かなかったキリスト教がいかにして教祖の身体を表象してきたのか。著者の論は(いつものことながら)射程が広く、あるイメージが形成される背景となった複雑な社会的、政治的、思想的背景を解きほぐす手腕からは美学という学問が持つ「自由さ」が感じられる。。個人的には、フレイザーの「キリストの受難」に関する「異説」がとても印象的だった。2017/04/23
左手爆弾
5
キリスト教といえば、偶像崇拝を禁じており、肉欲に対して禁欲的というイメージがある。しかし、やはり多くの人間をキリストに向き合わせるために、伝統的に身体や顔を教義の中で用いてきた。痛めつけられたキリストの身体、聖体拝領によって食べられるキリストの身体は、神が身体を持つことの本質的な理由を教えてくれる。神は人間とともに苦しむために受肉し、地上に降りてきた。ロゴスとしてのキリストだけでなく、身体を持ったキリストこそが信仰にとって大きな意味を持つ。図像解釈なども多く行われているので、楽しく読める。2018/12/25
utataneneko
4
キリスト教にとって重要なのは目に見えるものではなく霊魂や精神性…とはいっても、やはり信仰生活を続けていくためには目に見える「とっかかり」がないと、なかなか難しいのだろう。というわけで現在に至るまで、キリストに関するありとあらゆる種類の図像が存在する。年を取って威厳にあふれるキリストがいる一方、美少年のような姿、受難のむごたらしい姿…。キリストと一体になりたいがためにその傷までも我が身に受けたいと考える、いにしえの信者たちのそんな切実な思いがさまざまな図像から伝わってきた。2011/02/09
瀬々
3
「キリストは美しかったのか、醜かったのか?」という内容が一番面白かったです。宗教関連の本なのでタイトルも精神的な隠喩だろうと思っていたら、直球だったので驚きました。確かにキリストの美醜は気にしたことがなく、一般的なイメージで私も接していたのでとても興味深い一冊でした。2016/03/01