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内容説明
人は自由意志に基づいて行動している、と誰もが思い込んでいる。しかし、実は選べないことの不自由さを人間は本源的に抱えているのだ。自分の性別や容姿だけでなく、心をコントロールすること―─例えば、劣等感や羞恥心を容易に断ち切ることの難しさを感じたりはしないだろうか。本書は、発達心理学と供述分析の視点から、自由と不自由の間で絡み合う心のメカニズムを解明する。著者は一九七四年の「甲山事件」という冤罪事件の弁護団との出会いをきっかけに、「なぜ無罪の人が自白をするのか」という問題を三十年にわたって追及してきた。取調室という空間では、たとえ拷問がなくとも、人間の心理は思いもしない方向に引き込まれてしまう、という。また、著者は福祉学部の教員として、身体障害や発達障害の子供たちと長年ふれ合ってきた。それらエピソードを通して、人間の自由を妨げる「見えない壁」を浮き彫りにする。従来の心理学の盲点をついた好著である。
目次
序 講義をはじめるまえに
第1回講義 取調室のなかで「私」はどこまで自由か(自由とは何か、不自由とは何か 取調室のなかで人はどこまで自由か 自白の任意性判断と信用性判断 ほか)
第2回講義 この世の中で「私」はどこまで自由か―関係の網の目を生きる「私」(「羞恥心」とは何か 「羞恥心」を成り立たせている心的構図)
第3回講義 「私」はどこまで自由か―さまざまな「壁」を生きる「私」(並び立つ三つの視点 自由と不安 「私たち」の生きるかたち ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
加藤久和
4
心理学者として冤罪問題に長く関わってきた著者の講演録。数々の冤罪事件の記録などを読むと、なぜ人は犯してもいない罪を自白してしまうのか?という疑問に捕われてしまうのだが、その疑問が少し解けたように感じた。それは取調室という異常な空間においての正常な対応の結果なのだと。私達は普段心の中で自由にものを考えているように思っているが案外そうではなく、心は自分が置かれた立場や自分の身体のありように大きく左右される。神の視点から見たら絶対にあり得ないことでも、生身の視点から見たら起こりうる。それが冤罪自白なのだ。2018/11/07
鵞鳥
2
自分を縛るのは自分ということでしょうか・・・2012/12/01
ceskepivo
2
やってもいないことを自白してしまう人の心理。「自分はやっていないのだから、やったといっても刑を受けることはないだろう」という気持ちが自白につながるとの指摘は、驚くととともに納得してしまった。身柄を拘束された時点で、任意の自白はあり得ないことが分かった。2011/08/24
tnk.UZ
2
ブリコラージュ読書会の課題本でした。冤罪を取り巻く心理の描写が強烈でした。
SGM
1
★☆☆☆☆今の自分には合わない本でした。結局何が言いたいのか分かりません。やたらと小難しく考えている印象。2016/02/06