内容説明
天皇が政治的な統治権力を持っていたのは歴史のなかでわずかな期間であったが、一貫して日本の精神文化的な象徴権威としてあり続けてきた。なぜ権威の持続が可能だったのか。本書はこの問題を追究する一冊として書かれている。著者は、天皇の精神文化的な権威の核にあるのは自然宗教的なものではないか、そのなかには自然生命を育む母性への信仰が半分はあるのではないか、それを保持し続けてきたことが皇室の持続を可能にしてきたのではないか、と推論する。日本には、古くは彼方の山や鳥などを遥拝する自然信仰があり、各地の氏族共同体の祭祀を行う巫女が山の神や島の神を祀る。さらに、神霊と接触することから巫女を神のキサキとみなし、崇拝する信仰が生まれ、それらが語り継がれていく中で女神信仰が生まれた――。日本全国の女神の由来や足跡を訪ね、壮大な古代ドラマの中に女帝の本源を探る、著者渾身の一冊。女帝の是非をめぐる論議に一石を投じる!
目次
女帝の本源はどこに求められるか
キサキとは何か―京都府賀茂川
国生み神話の伝承と謎を訪ねて―徳島県名西郡神山町・淡路島
太陽の女神アマテラスと海(渥美半島伊良湖岬・神島・鳥羽石鏡;三重県伊勢市)
玄界灘航路を守護する宗像三女神―福岡県宗像市
オキナガタラシヒメと八幡信仰―大分県宇佐市
出雲のキサガイヒメと佐太大神―島根半島加賀潜戸
熊野の自然と女の霊力―紀伊半島熊野
諏訪の御柱信仰と生き神信仰―長野県諏訪
三輪山伝説と最初の女帝のイメージ―奈良県桜井市三輪
卑弥呼と聞得大君にみる巫女王の伝統