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内容説明
日本国憲法第九条を改正すべきか否か、決断を迫られる時代が近づきつつある。しかし、立憲主義、つまり、そもそも何のための憲法かを問う視点が見落とされてきた。その核心にある問いにたちかえり、憲法と平和の関係を根底からとらえなおす。情緒論に陥りがちなこの難問を冷静に考え抜くための手がかりを鮮やかに示す。
目次
憲法の基底にあるもの
第1部 なぜ民主主義か?(なぜ多数決なのか? なぜ民主主義なのか?)
第2部 なぜ立憲主義か?(比較不能な価値の共存 公私の区分と人権 公共財としての憲法上の権利 近代国家の成立)
第3部 平和主義は可能か?(ホッブズを読むルソー 平和主義と立憲主義)
憲法は何を教えてくれないか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
masabi
16
2004年出版当時に騒がれ、今も騒がれている憲法改正論議に欠けている立憲主義という視点。立憲主義に立ち返ると憲法9条と平和に関する一定の方向性が見えてくる。立憲主義とは、公私の区別をして社会的なコストや便益を振り分ける社会的システムを定めるものである。国民主権に反して民主主義的決定が制限を受けるのは、その決定が往々にして個人の定める究極的価値に抵触するものであり、公的領域にそのような価値判断を持ち込ませないという立憲主義に反するからである。2016/01/23
まさにい
13
たぶん人は日々の生活を笑顔で送りたいと思っている。日々を笑顔で送るためにはどうしたらいいのか。日々の笑顔を個人の自由の実現としたら、この個人の自由の実現の内容とはことなる内容を持つ人々の顔は笑顔にはなりえない。同様に法律は民主主義の過程を経て成立する。しかしこれは多数の意見の結果である。この多数の意見とは異なる者の自由は制限される。自由と民主は実は対立する概念である。立憲主義とは何であろうか。これは自由と民主を融合させるための概念である。意見の違う者たちを『共生』させるための機能を有する。2018/05/30
Kei
12
主に立憲主義についての本。これまで民主主義や自由主義、政治学等の本を読んできたが、先にこの本を読めばよかった。分かりやすく解説が丁寧である。本書にもあった憲法9条問題。憲法は原理を示すのであって、準則を示すのではない。日本国憲法は日本国のあり方を定めたもので、外国には適用されないし、当然に集団的自衛権の行使も認められない。著者である長谷部教授は国会召集時、集団的自衛権の行使容認は憲法違反であると述べていた。しかし、だからと言って憲法改正する事も的を射ていない。この国にあった方法は如何なる物なのかと思う。2016/08/03
ふね
12
ブックオフの100円コーナーでたまたま見かけて手に取った本。法学部の授業でしばしば名前を聞く長谷部先生の著作。結果的に非常に良い買い物ができた。「立憲主義とは」「民主主義とは」といった議論を法哲学的な観点からまとめたうえで、日本の憲法(特に9条)改正論議について考えるきっかけを示唆してくれる。原理から憲法を学ぶのには良書。憲法改正の解をインスタントに導く性質の本ではないので、そういったものを求めている方にはおすすめできない。久々に考えさせられた本だった。2014/10/04
ニクロム
11
人にとって、人生の意味や、宇宙の意味といった根底的な価値観は非常に重要である。その根底的な価値観は多様であり、両立しない。そして、比較不能である。立憲主義は、多様な価値観を抱く人々が、それでも協働して、社会生活の便益とコストを公正に分かち合って生きるために必要な、基本的枠組みを定める理念である。そのためには、生活領域を公と私に人為的に区分し、最低限一致できる自己保存について公的領域で保障し、比較不能な価値観を私的領域に封じ込めて、比較不能な価値観の対立と自己保存を支える社会システムとを切り離す必要がある。2015/02/18