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内容説明
グローバル化の進展につれて「自己決定」が求められる時代。その背景には、人間は「自由な主体」であるという考え方がある。しかし「自由な主体」同士の合意によって社会がつくられるという西欧近代の考えは、ほころび始めてきている。「自由な主体」という人間観は、どう形成されたのか? 近代社会の前提を問い直す。
目次
第1章 「人間は自由だ」という虚構(現代思想における「人間」 よき人間と悪しき人間 ほか)
第2章 こうして人間は作られた(人間的コミュニケーションの習得 コミュニケーションの「普遍性」と「特殊性」 ほか)
第3章 教育の「自由」の不自由(「人間性」教育としての「生きる力」論 「ゆとり」から「主体性」は生まれるか? ほか)
第4章 「気短な人間」はやめよう(主流派としての「リベラリズム」 挟撃される普遍主義 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
39
「自由な主体」になるように強制される「不自由」さ、という矛盾について批判しています。近代哲学史を参照することで、自発的な発露としての自然人たる「人間性=自由」を、つくられた人間観として限界づけます。自由とは自然に備わっているものでは無く、自由の限界が示されることで、自由の領域が確保される。限界づけられたことも、アイロニカルに「不自由」と表現しています。浅薄な日本の教育行政に対して嫌味たっぷりですが、本書が読むべきところは、アーレント、デリダの非常に優れた各論がコンパクトに概観できるところではないでしょうか2019/12/20
禿童子
23
リベラリズムの古典的な説明(ホッブズ、ロック、ルソー)と、ロールズの「公正としての正義」論およびそれに対するアンチとしてのリバタリアニズムとコミュニタリアニズムの解説。著者が推すコーネルの「イマジナリーな領域に対する権利」など当時のポップな話題が取り上げられている。医療でのインフォームド・コンセントの問題~医者が説明を尽くしたら、あとは患者の「自己決定」に委ねられるという構図に含まれる欺瞞。おしまいの方で著者がコミットした制癌剤の臨床実験の話が生々しい。実例から入れば分かりやすかったのに、少し残念な構成。2018/08/26
月をみるもの
14
けっこう前に出た本(2003年発行)なんだけど、その後のサンデルブームに繋がるようなネタもあり、全く古さを感じさせない 。ゆとり教育の胡散くささが、「"自由な主体"になるように強制されることの "不自由さ"」に由来していた、というのはすごく納得。2019/10/12
ネムル
12
アレントからファノン、ルソーからデリダなどと意外なところから現代思想に線を引くのが面白かった。最後に主体性=気短いという点について言及されるが、日に日に加速する現代社会において如何に立ち止まるか、そこに他者を巻き込みうるかは難しい問題である。2018/04/09
翔亀
10
宇野重規が良かった勢いで手に取ったが、これは困った。何でも自己決定という時代に我々はどうすべきかいう問題意識は宇野と共通しているが、両者に何という違いがあることか。両書の作品としての違いだけ述べるが、この本は言葉の使い方が安易すぎる。例えば、保守主義とかマルキストならわかるが、左の●×(人名)とか右の▽□が頻出する。いきなり本人の子どもの頃の体験により好き嫌いを言う。まあ時と場合によるだろうが、アーレントやハーバマスを引用しながら哲学的に「自由」の意味を問い直す文脈で言われると違和感が大きく■582014/01/17