内容説明
母と義父とに連れられて幼い頃行商の旅に暮した体験を明るく牧歌的に描き切った短篇「風琴と魚の町」、つましく生活する一組の夫婦の愛情を謳う「清貧の書」、転機を求めてのパリ旅行を素材とした「屋根裏の椅子」、男と女の後姿に、あるが儘の人生を見る客観小説「牡蠣」等。名作『放浪記』を力に、作家はいかに飛躍をとげたか。〈宿命的放浪の作家〉林芙美子の代表的初期短篇7作。
感想・レビュー
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みずいろ
2
女性にしか書けない物語だと思う。苦しい「生活」を綺麗事で誤魔化すのではなく、どこまでも現実味溢れるものとして描ききる。そこには荒々しい強さがあった。生きる女の意地と弱さがよくわかる。「屋根裏の椅子」のラストが好き。ぼんやりと椅子を見つめる三人の男を残して、女はたくましく帰っていくのだ。日本という国に、地に足をつけた生活に。2012/05/19
bb
1
女の業がしみじみと味わえる一冊。女ゆえの苦痛、愉しみ、しぶとさ、孤独感。男性にはピンとこないかも。2009/09/09
Maumim
0
1999年2月27日読了。