内容説明
浦賀にペリー艦隊が突如、現れたのは、嘉永六年六月のこと。この黒船ショックが、その後どういう変容を遂げて明治維新や現代に受け継がれて行ったか──。「戊辰戦争の敗者の慰霊鎮魂なしには、明治以後の歴史は語り得ない」とする著者が、動乱の幕末の深層を抉り、将軍から遊女まで、人々の息遣いに触れさせてくれる随想集。《目次の一部》榎本武揚と樺太、吉田松蔭とテレパシー、大奥は砂糖天国、家茂びいき、将軍の気くばり、トコトンヤレ節由来、写真術事始、ナポレオンと留学生ほか。
目次
黒船ショック
榎本武揚と樺太
吉田松陰とテレパシー
大奥は砂糖天国
将軍の気くばり
生麦の鮮血
攘夷派と国際派
文芸春秋界隈
下北の会津藩士
慶喜揺れる
海舟疑われる
慶喜へのこだわり〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
筑紫の國造
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歴史小説を業とする著者の、幕末に題を求めた随筆集。随筆とは言っても、しっかりとした史料を用いて引用も多く、読み慣れない人にはやや難しく感じられるかもしれない。しかし、著者は歴史に対して現代人が陥りがちな独善的な視点を排し、非常に謙虚な眼で眺めており、また史料についても決して引用するだけに止まらず慎重な取扱をしており、抑制の効いた謙虚な文体は好感が持てる。小説家にありがちな決めつけや偏見がほとんど見られず、気持ちよくよく楽しめる。普通のエッセイに物足りない人にはお勧めの1冊。2015/06/16