内容説明
帰化は小学1年生のとき。当時の夢は警察官になること。おばあちゃん子で育った25歳の日本籍在日コリアン3世が綴る自分や家族の日常と日本社会の交わる風景。おいしいキムチやチャンジャにはしゃぎ、デマサイトやヘイトピーチに憤り、沖縄や蓮舫議員や成宮寛貴に共感したり反発したり、朝鮮半島の歴史や現在のありように思いをはせる日々。多様性や寛容さが失われつつあるこの国のもうひとつの声。同タイトルの人気ブログを大幅に加筆修正して書籍化しました。
目次
キムチの季節に(「土人」はいつも猿轡をされる;日常の中にある問題と路上に出る問題 ほか)
トックの季節に(こんなときに求められること;リビングとクラスTシャツと生活保護 ほか)
キンパの季節に(四月三日;ボールが描く虹色の夢 ほか)
参鶏湯の季節に(柳に今を尋ねる;蓮舫よ。ここで戦わなくてどうする ほか)
アワビ粥の季節に(「オッパ」って言われること;文化は境界線を超えて ほか)
著者等紹介
金村詩恩[カネムラシオン]
1991年生まれ。ブログ「私のエッジから観ている風景」(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ntahima
14
2017年の掉尾を飾る一冊!某SNSで著者をフォローしている関係で本書を知る。先ずは、著者に謝らなければならない。“知り合い本”という軽い気持ちで読み始めたが、そういう類の本ではなかった。修飾語を極力排した静謐な筆致。その一文一文が心に染み入る。必ずしも全ての意見に同意する訳ではない。が、その見解の異なる箇所さえも心地よく読めた。時には、大所高所から声高に天下国家を論ずることも必要かも知れない。だが、学者でも政治家でもない市井の身としては、著者の柔らかい言葉がより深く胸に響く。この時代を書き続けてほしい!2017/12/31
nishiyan
9
26歳の日本籍在日コリアンの青年が綴ったブログを書籍化にあたって加筆・修正して出版したものである。青年特有の気負いはなく、率直な文体に好感を持った。合間に挟まれるキムチや料理の話は箸休めにもなっており、構成の巧さがあって年相応ではないなと思った。昨今はヘイトスピーチがまかり通り、差別や偏見は顕在化・攻撃的になっている。その中で彼は悩み、戸惑い、怒り、時には葛藤しながらも一歩一歩進んでいる。彼の目から見えるものを読者の立場から見たいと思った次第。良書。2018/01/01
踊ウタマロ(コアラ擁護情報局長)
7
一つ一つの章(?)にコメントしたいところだけど、いちばん思ったことをw 読んで「家族」をとても大切にしていることを思いました。わたしは母が再婚なんですが、義父を「お父さん」と呼ばないことを、在日の方に酷く責められたことがあります。わたしは呼べない事情があるのですが「どうしてこんなに言うの?」って不思議に思ったものです。読んで、私たち日本人よりずっと、複雑な事情抱えた中で「家族」や「一族」の絆を大事にしている⋯というか、良い意味での「拠り所」としているのかなって。「みずみずしい感性」まさにまさにの1册です!2018/01/25
Masatoshi Oyu
7
著者の主張は、「私が私であることに何の遠慮もいらない」ということだろう。本書は、この一見当たり前なことが非常に困難な社会に対する怒り、悩み、そしてまた希望を述べる。この著者の主張には私も賛同する。関連して私見を述べれば、「LGBTの権利」や「在日外国人の権利」の保障という言説は、本来は好ましくないと思う。本来は属性はなんであれ、その人がその人らしくあることは当然の個人の権利だからである。ひと括りの議論は当事者をおきざりにしてしまいかねない。本書は、こうした普段の生活では得られない新しい視点を与えてくれた。2017/12/28
トト
6
日本に帰化した在日コリアンという若者のブログを書籍化したもの。出自的マイノリティー目線で語られる内容は、個人的な話題が主だが、マイノリティーとしての周りのイメージと個人の思いの葛藤に悩む姿は、誰しも共感出来る部分だと思います。 カテゴライズしてイメージを固定化するのは人間のクセですが、異質なものに対して攻撃的になるのではなく、寛容していくことが大切な気がします。2018/02/14