内容説明
日露戦争でロシアの敗戦が濃厚になったころ、首都ペテルブルグに姿をあらわしたルイブニコフと名乗る復員軍人。「これはきっとロシアに潜入した日本人スパイにちがいない」と目をつけたジャーナリストは、男のしっぽをつかもうと街を連れ回すが…病いをかかえながら試合にいどむサーカスのレスラー、栄光の座から転落する競馬馬、さまざまな人生が流れ込む下宿宿で自殺する学生、人妻に寄せる純真な恋心を死をもって完成させる男…どの作品でも生の真実を描きだし、人間観察の達人としてチェーホフ、トルストイにも高く評価されたクプリーンの魅力満載の短篇集。
著者等紹介
クプリーン,アレクサンドル[クプリーン,アレクサンドル][Куприн,А.И]
アレクサンドル・イヴァーノヴィチ。1870‐1938。ロシア中西部の小さな町に生まれ、父を早くになくし、一時孤児院ですごした。陸軍幼年学校から軍隊勤務へとすすむが20代で退役、放浪生活の中でさまざまな職業を体験しながら新聞などに文章を書きはじめる。30代には作家として認められ、チェーホフ、トルストイやブーニンとも交わり、全集をだすまでになり一流作家の地位を確固たるものにした。革命後は国外に出てパリで生活するようになるが生活は困窮、病いに苦しみながらソ連の亡命者帰国運動にのせられてモスクワに帰るが間もなく食道ガンのため亡くなった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まどの一哉
2
解説によると作者クプーリンはエネルギッシュで荒々しい性格。ジャーナリストの仕事に大いに健筆をふるった作家で、内省的なタイプではなく、市井の人々の只中に飛び込み、実際に多くの仕事を体験して丁寧に伝える作風。人物や風景描写が言葉豊かでみずみずしく、たっぷりの情感が味わえる。 「ルイブニコフ二等大尉」:大手新聞の人気コラムニストは、のんきで気のいいルイブニコフ二等大尉の東洋人的な顔立ちを見ただけで、日本人のスパイであることを確信するのだが、それがあまりにも大雑把な判断で二流記者ぶりが現れていておもしろい2021/01/25
さとみ
1
ロシア語のテキストを読んだ後に、日本語訳を発見
suzuki-takefumi
0
「入り込みにくい」感じがした。妙に観念的というか。日露戦争当時のロシアの風俗、雰囲気を感じるために読むのであれば、中々面白そうな作品集だと思う。小説としては今ひとつ面白く感じられなかった。2013/01/10
コカブ
0
「ルイブニコフ二等大尉」・「サーカスにて」・「エメラルド」・「命の河」・「ざくろ石の腕輪」を収録。2012/10/06
ココマ
0
読むだけでない、活動的な楽しい本だった。命の河に出てきた料理を実際作ったりしてみた。結構すごい作家なのに現在、彼の本で手軽に買えるのはこれだけ、というのがとても残念だ。日露戦争時のロシア市民の本音がうかがえるのも珍しかった。2011/03/04