内容説明
義経はなぜ平泉に逃げたのか。清盛はなぜ福原に遷都し、宋と貿易したのか。中国大陸の宋と金は、源平の戦いとどう関わったのか。東アジアの視点から歴史のダイナミズムを捉え、衝撃を与えた名著に四篇を増補した決定版。
目次
義経の東アジア(義経の時代の東アジア情勢;義経登場前夜の日本;源平合戦の国際性;武士道と義経伝説)
異境の表象
朱子学事始―武士の理想像の変容
開かれた日本思想史学へ
歴史を開かれたものに
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kenitirokikuti
9
図書館にて。本書はNHK大河ドラマ『義経』(2005)合わせで刊行されたもので、これは2010年に出た増補版(のち文庫にもなっている)。私が過去に読んだのはこの2010年版だったと思う。05年は戦後60年だったので、そういう空気を感じる。現在はそこから20年弱が過ぎ、平成さえ過ぎてしまったので、さすがにもう戦後思想(戦争体験を重視する)という枠は古くなったことを感じる。2023/03/15
Junichi Watanabe
2
読了。「義経の東アジア」だからもっと義経中心かと思っていたらさにあらず。平安末期から鎌倉にかけての朝廷、奥州平泉藤原家、東国武士を東アジアの視点で捉えた書。教科書にも清盛の日宋貿易は出てくるが、それを2歩も3歩も踏み込んで書かれている。また、思想的部分は中世だけではなく江戸時代、明治維新辺りまで幅広く描かれているので興味深い。2021/05/07
あつもり
1
宋は鋳造する通貨量を増加させ、人々の購買力と購買意欲を増大させ、経済活性化をはかる政策をとったが、その影響は宋銭を通じて周辺各国に及んだ。特に遼や金に中国北部の金の産地を押さえられた宋は交易で金を調達すべく、日宋貿易を働きかけ、奥州産の金を求めた。その機会を活かして、国内に宋銭を引き入れ、自身の蓄財と経済の活性化をはかったのが平家。一方で関東で農業立国を目指したのが源氏。「対立軸は『開国か鎖国か』にあった。」(P.87)2021/02/22
えみし
0
中国思想史の専門家が、東アジアの当時の国際状況の中で、外から見た中世日本、源氏と平家の争い。なぜ義経が奥州藤原氏を頼ったのか。藤原氏の後ろに決して一つにまとまっていなかった中国がある。中国大陸と奥州の関係は近年研究が進んでいる。ワクワクする。真面目な著作なのに適度にジョークが入っていて、けして義経=ジンギスカン説を主張するものではないです。他書でもちょっと題に騙される感あるのです(笑)2016/08/17
潟山男
0
日本史の専門家でないからこそ、興味深い指摘が数多くなされている。確かに中世の特に外交史では、「日本」という枠組を取っ払って考えることが不可欠。2015/12/30