内容説明
狂気じみた“難解”な思想。信じるか、信じないか、二者択一を迫るテクスト。その情念と現代性を解き明かす、初のフーリエ論。
目次
「空想い」した人々
第1部 フーリエの軌跡(協同体と情念引力―『四運動の理論』(1)
地球の生涯をめぐって―『四運動の理論』(2)
呼びかけるテクスト―『四運動の理論』(3)
オーウェンとフーリエ―『家庭的農業的協同体概論』
フーリエの夢想都市―『産業的協同社会的新世界』
恋愛のポリティクス―『愛の新世界』(1)
美食学の誕生―『愛の新世界』(2))
第3部 フーリエの射程(拡散する波動―フーリエを読む作家たち;パサージュの思考―フーリエとベンヤミン;変革への意志―フーリエとブルトン;快楽の言語―フーリエとバルト)
いま、なぜフーリエか
著者等紹介
石井洋二郎[イシイヨウジロウ]
1951年東京生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授(地域文化研究・フランス文学)。著書に『ロートレアモン 越境と創造』(筑摩書房、第59回芸術選奨文部科学大臣賞)など。訳書にブルデュー『ディスタンクシオン1・2』(藤原書店、第8回渋沢・クローデル賞)、『ロートレアモン/イジドール・デュカス全集』(筑摩書房、第37回日本翻訳出版文化賞・第9回日仏翻訳文学賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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endormeuse
2
友愛と調和ではなく、情念の不調和と差異(の生み出すある種の推進力)に基づく共同体を構想したという点でフーリエの特異な空想力はオーウェンなどの他のユートピストから際立っている。「神は束縛によってではなく引力によって宇宙を支配している」。著者も指摘するように、奇妙にもそれは理想的市場社会の似姿とも読める・・・2021/06/22
メルセ・ひすい
2
※私たちはその言葉をどうしても何らかの現実と対応した確認的なレベルで捉えようとしてしまう。けれども彼の紡ぎだす文章は、それが語っている内容の如何にかかわらず、しばしば人々を何らかの行為へと差し向け遂行的な性格を帯びる。純粋なエクリチュールの波動が神経や筋肉に浸透し、身体を内部から撹乱するだけが発することができる呪術的な言説であり、思想というよりはむしろ信仰の領域に属する。・・・2009/06/24
メルセ・ひすい
2
狂気じみた“難解”な思想。信じるか、信じないか、二者択一を迫るテクスト。その情念と現代性を解き明かすフーリエ論。2006.04~2009.01 『環』 25~36号 連載のまとめたものに加筆 ・フーリエの口調はいきおい誰も知る者のない秘儀を伝授された宗教者さながらの神秘性を帯びてくる。命題自体が妥当であるかどうかを吟味する以前に読者は「自然の秘文を読みはじめた」と称する彼の言葉を無条件的に信じないかと言う二者択一を否応なく迫られるのだ。※2009/06/22
虎助遥人
1
タイトル買いした本である。これを読んで初めてフーリエという人物を知った。初めて触れる分野の本なので全くと言っていいほど咀嚼出来なかった。なので何年も放置していたがこの度ようやく読み終えた。フーリエという人物の熱狂や世界観や文章が多くの人々を魅了してきたということは十分伝わった。これは四運動の理論もちゃんと購入して読んでみなくてはなるまい。読む際は「終章 いま、なぜフーリエなのか」にあるようにテクストから放射される磁力にひたすら身を委ねてみたいと思う。2016/08/01
スズキパル
0
シャルル=フーリエの不可解なテクストと、それに影響を受けた批評家たちを取り上げる。地球の歴史を32分割して、予言めいたことを詳細に述べたかと思えば、自らが打ち立てた「美食学」に基づき、りんごの食べ方について、人生の四局面に応じて事細かに論じる… 後世のマルクス主義者から「空想的社会主義者」として、社会理論の面から捉えられることが多い彼だが、彼の夢想した協同体では、凡庸と平準化は「調和の敵」として忌避されていた。フーリエの思想や世界観は、「社会主義」の枠には収まりきらないものだろう。2015/01/18