感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
5
2つの名が並ぶタイトルは対立なる関係以上の細部を読者に示す。討論的カッシーラーと論争的ハイデガーの間に新旧、世代、近代とその終り等の雑駁な関係を読む余地はない。カント解釈を巡るこの討論は「人間」概念の構成と解体に関して、その構成を中世的への対峙という文脈で捉えるカッシーラーと、近代の解体という文脈で崩壊する概念として捉えるハイデガーの前提に、理性と人間を結ぶカントの意図を超えた、人間と理性の結びつきの変容という事態に両者が遭遇していることを示す。現代の読者なら理性が技術と融合する観点から本書を読むだろう。2019/05/06
井蛙
1
カント解釈を巡って対立するカッシーラーとハイデガーの討議の背景には「哲学をすることが可能であるならば、我々人間はどのような資格でそれを遂行しうるか」という問題意識がある。それゆえ未だロマン主義的な人間観を残すカッシーラーが新しい時代の危機を鋭く嗅ぎ分けて哲学界に登場したハイデガーに対して分が悪く見えたのも仕方ないだろう。しかし本当のところはどうだったのだろうか。とにかく個人的な課題としてカッシーラーの読解に向かわねばならない…2017/11/06