帰らぬ人―本田英郎戯曲集

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帰らぬ人―本田英郎戯曲集

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  • サイズ B6判/ページ数 487p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784885370472
  • NDC分類 912.6
  • Cコード C3074

内容説明

本田英郎の作品系列は大きく分けると三つになるように思う。ひとつは彼の中の「社会派」的な性格が発露している作品群。「帰らぬ人」、「神通川」、「勲章の川―花岡事件」、「若い座標」、「五月の人―尖閣列島」、「新聞の死んだ日」など、テーマは多岐にわたるが、彼がとくに精力を注いだ分野は、戦争責任、公害問題、教育(教科書裁判)であった。二番目には、歴史上の出来事や人物を扱った作品群。「暁の人」、「冬の鬼火―高野長英考」、「空海」などがこれに属す。しかし、ここでも英郎を根本で突き動かしているのは、歴史に題材を借りた、現代という時への社会批判の視点というべきものだ。最後に、彼の中で花開くことが少なかったが、潜在的にはもっともすぐれたものとなりえた、喜劇・風刺劇のジャンルがある。猥雑で饒舌で見事に混沌とした人間たちを、シェークスピアの喜劇のような、豊富な語彙と生き生きした会話で描き取った作品。後期を代表する「横須賀どぶ板通り―女たちの基地」はその典型で、彼の最高の劇作である。このような形で自分の作品を出版することが英郎の本意かどうかは分からないが、「お前たちに任せるから勝手にやってくれ」の一言に励まされ、文字どおり勝手に動いてしまった。収載する劇作の選定にも悩んだが、今回は作家・英郎の三つの面をよく表しているものを中心に五作を選んだ。