内容説明
運転免許の更新が3年に1度なら、私の息災延命は1年ごとの更新。“命さえ忘れなきゃ”をキャッチ・フレーズに、大好きな晩秋から初冬にかけてのころ、新たな1年に向けて自分を励ますのが、もう20年来の習慣となっている。そんな自分の周りの1年を、初冬の月から始めて、月とともに七つのとっておき話で綴ってみた。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
YUTAKA T
7
在日女性作家のエッセイ集。関東大震災のときの朝鮮人虐殺の話がすごい。朝鮮人は見つけしだい打ち殺せと言われるほどの状況で、横浜市の鶴見警察署の署長だった大川常吉氏は多くの朝鮮人を警察署で保護した。それを知った民衆は朝鮮人に味方する警察など叩きつぶせと叫び警察署を包囲した。大川署長は、「朝鮮人が毒を投入した井戸の水をもってこい。わたしが先に諸君の前で飲むから。そして異常があれば朝鮮人を諸君に引き渡す。異常がなければ私にあずけよ」と言い、「朝鮮人を殺す前にまずこの大川を殺せ」と大喝して混乱状態を収拾したという。2023/05/18
門哉 彗遙
2
31年前の本やけど瑞々しく心が洗われるような素敵なエッセイやった。 その中でも大川常吉さんの話に心を揺さぶられた。関東大震災の時に300人の朝鮮人を救った警察署長さん。殺せと迫る1000人もの暴徒の前に立ち塞がり、俺を殺してから行けとか、毒の入った井戸水飲んだるから持って来いとか、ほんまカッコええ。僕がその場にいるとしたら、大川さんに説得されてしゅんとなって帰っていく村人のひとりやなと思った。 キョンナムさんも書いてるけど「どんな状況下においても狂わない座標軸を持てる」人間に僕も少しは近づきたいと思う。2023/09/28
yUikA
2
大切にしたい感性・価値観に改めて気付かされた気がする。守らなければいけない最低限の普遍的なもの…私は守れているだろうか。人種差別や閉塞的な価値観は今と20年前とずっと変わっていないなぁ…と感じる。2022/11/12