内容説明
革命時代のソ連を生き、小説『巨匠とマルガリータ』を遺したミハイル・ブルガーコフは死の前年、「モスクワ芸術座」の依頼で、独裁者スターリンの評伝劇を書き上げるも、上演禁止の宣告を受けた。この史実をもとに、文学者が独裁者の評伝劇を書き上げるまでの葛藤を、想像力豊かに描出した戯曲。著者・鈴木アツト(劇団印象主宰)は、2019年の谷崎潤一郎「瘋癲老人日記」の舞台化を皮切りに、「国家と芸術家」シリーズを構想。ケストナー、藤田嗣治、ジョージ・オーウェル、カレル・チャペックら文学者・画家の評伝劇を上演。演劇と文芸読者を橋渡しする演目を増やし続けている。
著者等紹介
鈴木アツト[スズキアツト]
1980年東京都生まれ。劇作家、演出家。2003年に劇団印象‐indian elephant‐を旗揚げ。2012年「青鬼」で若手演出家コンクール2012優秀賞と観客賞受賞。2015年国際交流基金アジアセンターアジアフェローとしてタイに2ヶ月滞在。その後、文化庁新進芸術家海外研修制度研修員としてロンドンに10ヶ月留学。2019年ポーランドのドルマーナ劇場から招聘され、幼児向け作品「Ciuf Ciuf!」(作・演出)を滞在創作(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
法水
2
『巨匠とマルガリータ』で知られるミハイル・ブルガーコフが晩年、スターリンの評伝劇を書き上げながらも上演中止となった史実を基にした戯曲。現在、公演中なのでネタバレは避けるけど、ブルガーコフがどのようにスターリンと向き合っていくかを演劇らしい手法を用いて描き出していた。2023/07/23
まどの一哉
1
ブルガーコフを主人公にしたこと自体が非常に興味深いが、それだけに難しいと思う。なによりブルガーコフが稀有の幻想文学者であり他の何者でもない人間でならねばならず、単にスターリンの独裁に苦しみもがいている表現者一般で終わってはならない。2023/08/31