感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
❁かな❁
185
とても素敵な夏の終わりの少年達の記憶。ガラスのように澄み渡った空気。ほのかに馨る木犀。筆記帳(ノオト)の上のひだまり。瓶の中でパチパチと噴きあげる翠色のビーズのシトロンソォダ。ソォダ水のはじけるような音がするレコォド。とても綺麗で透明感があり幻想的な長野まゆみさんの文章と懐かしく美しい繊細な鳩山郁子さんの絵の調和が素晴らしい。ページを開くとあっと言う間にこの世界に入り込んでしまう。装丁も挿絵も素敵。アビと宵里の幻想的な物語。とても美しく儚げなこの世界の虜になってしまう。読了後も温かな余韻に包まれる作品*2016/01/27
優希
81
幻想的な空気が漂う小さな物語でした。言葉が感覚に響くようでした。ソォダ水のパチパチと弾ける音、レコォドの奏でる音楽など想像するだけでときめきます。ここにあると思いたいのに、手の届かないところにあるようなアビと宵里が美しかったです。物語の調べは少年たちの奏でる音楽。夏の終わりの気怠い雰囲気の中、一筋の光のように射し込むひと時の日常に身を委ねるのが心地よかったです。2016/01/27
かりさ
76
再読。夏が終わり初秋を迎える頃。硝子のような空気、ほのかにかおる木犀の匂いに包まれる校舎。古代天球儀のレプリカ、ガラスペン、シトロンソォダ、野外映画、ラベルの色褪せた古いレコォド…硝子細工のような美しい世界に点在する独特のきらめく言葉たち。繊細で儚く時に危うげな少年たちによって幻想世界に誘われます。野外映画会の夜、ソォダ水の音の記憶に導かれた出会いは…。長野まゆみさんの世界観に鳩山郁子さんの美しい絵が添えられた美しい本。あとがきの天球儀通信も素敵。2016/01/07
mii22.
62
天球儀文庫①夏の休暇が終わり生徒たちが校舎に戻ってきた。初秋の澄みわたった空気。ほのかに馨る木犀。今年最後の野外映画会の垂幕は天夜を航る船の帆になり夏の名残を乗せ秋の訪れを合図に進む。ソォダ水の泡の音に導かれアビと宵里二人の少年の記憶に現れたのは..。また友情と信頼で結ばれた二人の少年の切なくも懐かしい物語に浸れる幸せ。天球儀文庫はじまりの一冊目。鳩山郁子さん挿画の長野ワールドもいいなあ。2020/06/22
emi
48
この世界を好きだという女性の気持ちが分かりました。レトロと幻想と青春を、うんと淡く着色した世界に混ぜ合わせて出来たような、どこか儚さを感じる中性的な少年たちの物語。物語ですが、どちらかというと醸し出される雰囲気を味わう本ですね。夏の終わりの話なのでちょっと読む時期を間違えてしまったけれど、満月の夜、シトロンソォダを片手に古いレコォドを聴きながら読めたら最高です。あの頃も、今も、心のどこかには、こんな世界を忍ばせているから、不思議と懐かしい感情とともに読めたのかもしれない。美しいものを静かに愛でるような一冊2016/04/04