内容説明
先祖秘伝の忍法書を受け継いだ安サラリーマン伊賀大馬の身に降りかかる珍騒動の数々!風刺と諧謔に満ちた風太郎忍法帖の現代篇、著者の個人短篇集に未収録の現代もの9篇も同時収録。
著者等紹介
山田風太郎[ヤマダフウタロウ]
1922(大正11)年、兵庫県生まれ。東京医科大学卒。大学在学中の46年に探偵小説誌でデビュー。49年に「眼中の悪魔」「虚像淫楽」の二篇で第二回探偵作家クラブ賞を受賞したが、推理小説の枠にとらわれず、時代小説、ユーモア小説、怪奇小説など多彩な作品を発表した。六〇年代には「風太郎忍法帖」シリーズが大ブームとなる。七〇年代からは明治の裏面史を描いた一連の明治小説、晩年には室町時代に材を採った作品を発表。97年に第四十五回菊池寛賞、2000年に第四回日本ミステリー文学大賞を、それぞれ受賞した。01年7月没
日下三蔵[クサカサンゾウ]
1968(昭和43)年、神奈川県生まれ。出版社勤務を経てミステリ・SF評論家、フリー編集者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
44
現代を舞台にした忍法帳。後書きで忍法帳というより奇想小説として読んだ方がよいと書かれていたが、全くその通り。出てくる忍法すべてが時代物のようなおどろおどろしい雰囲気は欠片もなく、妙にナンセンスでこじんまりとした物ばかり。現代の雰囲気的にはこちらの方がぴったりかな。当時の事件なども題材にされてるっぽいが、はっきりとわかったのはスカルノ大統領くらいであった。読みながら筒井康隆の諸作品、特に『俗物図鑑』を何となく思い浮かばされた。ラストのカタストロフも似通ってるし。同時収録の現代ミステリも幅広くて面白く読めた。2015/03/27
猫丸
14
入手困難作品を日下さんがまとめてくれたもの。ショートショート9篇も含む。伊賀忍者の末裔である頼りない若者が先祖の忍法帖を発見、珍妙な忍術で繰り広げるドタバタ喜劇。ストーリーの展開速度が大きく、目まぐるしく進展して、あれよあれよと「んなバカな」の境地へ連れ去られる快感。これ、久しく体感していなかったな。子供の頃の読書の楽しさに近い。とは言っても本作は子供が楽しめるもんじゃないですが。バカバカしい物語を通して、現実の方がよりバカバカしいことを教えてくれる。こんなツマラヌ感想でもうしわけないです。2020/01/30
河内 タッキー
13
駄作では全くない。忍法帖シリーズとは異なり、格闘シーンはほとんどないのだが、先祖から伝わる意味不明の忍法をうまく活用して事件解決するアイディアはさすが山田風太郎。解説にも書いてあるが、これが書かれて五十年たった現在、社会も人間も何も変わっていない。それが不思議であり、また面白い。2013/11/04
てっちゃん
12
山田風太郎の忍法物と書籍化されていない作品をまとめた物。忍法といっても一連の忍法帖のシリーズとは全くの別物で忍法は出てくるけど、ナンセンスと社会風刺に使っている現代物作品。昭和生まれには結構面白く、読んでて吹き出す場面が多々あった。ストーリーはあってないようなもの。他の短篇はショートショートのような切れ味鋭いミステリー。こちらはブラックな味わい。この本はミステリ珍本全集という叢書の1冊目で、編集者は日下三蔵さん。本当にいつも楽しませてくれてありがたいです。2022/04/10
ペペロニ
6
忍法相伝73で繰り広げられるドタバタ劇を楽しく読んだ。終わり方が唐突すぎて消化不足な感じはしたが。帯に書いてある通りに「風刺と諧謔に満ちた」ものとなっていて、しかも現代でも通用して見えるのはすごい。2014/01/14