内容説明
沖縄をはじめ日本国内で米軍をもてなす対米従属は「戦争に巻き込まれない」ためとされた。しかし、安保法制に成立によって、自発的に「戦争に巻き込まれていく」かたちに反転した―。過去から現在・将来を見据え、平和憲法の意義をあらためて問い直す。
目次
第1章 「従属」の源流(「もてなし機関」の前史;間接占領に順応;特別調達庁の発足;ごまかしの再軍備;「孤立」後も従属)
第2章 「豊かさ」とともに(「基地問題」とイデオロギー;砂川闘争の教訓;「思いやり」の強要;補償型政治の「進化」;平和と安全のための振興策;「アメとムチ」政策の罪)
第3章 平和憲法を抱きしめて(「基地政策」のメンタリティー;「土民軍」としての矜持;もてなしの極限;世論の深層;中国コンプレックス)
著者等紹介
渡辺豪[ワタナベツヨシ]
1968年兵庫県生まれ。関西大学工学部卒業後、毎日新聞記者、沖縄タイムス記者を経てフリージャーナリストとなる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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coolflat
17
辺野古の新基地建設を進めているのは沖縄防衛局という、旧防衛施設庁の沖縄の出先機関だ。防衛施設庁は、同庁技術審議官ら三人が逮捕された事件が引き金となり、2007年に解体され、今は防衛省の地方協力局などの部署に業務が引き継がれている。相次ぐ不祥事で政府官庁として「落ちこぼれ」の烙印を押され、「解体」という憂き目にあってもなお、その任務は国の権力中枢に吸収する形で温存され、システマチックに機能しているのが実態だ。本書は、これまであまりスポットの当たらなかった防衛施設庁の役割を検証し、沖縄問題の本質に迫っている。2016/08/29
勝浩1958
12
アメリカの軍隊が長期間駐留し続けることから生じる、独立国家としての理念や制度の崩壊、精神性の毀損を「カネでかたのつく問題」に転換して処理してきた戦後統治システムであったのですが、安倍政権になってからはアメリカへの隷従がいっそう顕著になってきました。日米間の交渉は特定秘密保護法によって、国民にその内容や交渉経過を知らされることもないのでしょうが、アメリカからの要求に唯々諾々の状態であろうと想像します。自衛隊員は戦場に赴くことになるのでしょうか。今夏の選挙が日本の命運を決めることになるのでしょう。2016/04/16
Mao
6
沖縄のみならず首都圏上空の管制権も米軍に握られたまま気にしない日本人の本質とは…戦勝国に国土の一部を不当に占領されているという「意識することが不快な事実」から目を背け続けていること。そうしている限り解決は望めない。 更に、中国に負けることだけは嫌だという対中コンプレックスのせいで、アメリカに進んで従属している。 2015/11/26
かおりん
4
沖縄をはじめ国内で米軍をもてなす対米従属は、日本が「戦争にまきこまれない」ための有為な政治戦略と認識されたがゆえに、国内世論の理解と賛同を得るようになった。が、現在過度な対米従属から脱却できないがゆえに、日本が自発的に「戦争に巻きこまれていく」形を整えようとしている。「戦勝国に国土の一部を不当に占領されている」という事実を日本人が認めていない。不快な事実から目をそらせる仕組みが政府によって巧みに構築されてきた。沖縄をはじめ基地問題や対米に翻弄されてきた人々の思いや誇りは最低でも知っていないとだめだと思った2016/05/17
田中峰和
4
従属の源流は、敗戦後の経緯GHQによる占領期にさかのぼることができる。米国は効率的に統治するため、日本政府機構を通じて権限を行使することにした。間接占領ともいえる統治方式は、占領軍御用達の調達機関を誕生させた。以来アメリカの顔色を伺い、意向を忖度する姿勢が続く。鳩山首相を退陣に追い込むため、外務・防衛官僚は首相を裏切り、マスコミ幹部や評論家は競って「日米同盟にひび」と大合唱した。GDP2位を明け渡して以来、中国コンプレックスがすすみ、中国脅威論も盛り上がる。片思いと思いつつ強者にすがるのが民意なのか。2015/12/11