内容説明
…おばあちゃん、まるで後を追うみたいだったね。病院で、返事をしないおばあちゃんにむかって、話しかけてたよね。「ねえ、音楽は聞こえてる?」(「死者のための音楽」より)。怪談専門誌『幽』の連載で話題騒然の作家、待望の初単行本。
著者等紹介
山白朝子[ヤマシロアサコ]
1973年、大分県生まれ。出版社勤務を経てフリーライターになる。2005年、怪談専門誌『幽』で作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちょろこ
86
不思議な感覚だった、一冊。単独の山白さん作品。淡々とつづられ語られる言葉はどれもこれも、たとえ残酷な描写でもスルスルと吸い込まれるように頭に入ってきた。そして頭から抜け出た言葉たちは今度はせつなさに姿を変え心の中に侵入し、じっくりと心にとどまるようなそんな不思議な感覚だった。表題作はもちろん、「鳥とファフロッキーズ現象について」は涙せずにはいられなかった。「井戸を下りる」の世界観が一番好み。静かな秋の夜長に読んだからか、余計にせつなさに包まれた気がした。2018/10/04
dorebook
59
以前読了した【メアリー・スーを殺して】で山白朝子名義での「トランシーバー」が良く、単一で読みたいと思っていた。山白氏としての作風は、親と子の絆傾向が強いのかな。表題作を含めた7編。何代にもわたったある家族と鬼を描いた「鬼物語」、井戸の底での逢瀬「井戸を下りる」、産んだ子の正体はの「長い旅のはじまり」等は時代設定も古く、厳しい生き様ながらも表現がとても美しかった。それとは趣が変わった表題作「死者のための音楽」には涙し、「鳥とファフロッキーズ現象について」はちょっぴり乙一風が顏をだして面白い題材だった。2018/02/07
七色一味
51
読破。【裏・怪談本】第8弾の本書は、トマト教司祭こと河瀬瑞穂さんご推薦です。乙一さんの別名義での短篇集。なんとなく乙一さんの作品となるとテンションただ下がりな私。別名義ってのがよくわからないんですけどねぇ。何のメリットがあるのか。まぁ、作者さんはこの際脇にうっちゃって…。怖い、というか…。現代モノの3編は書下しの表題作を除けばありがちな感じ。他の4編は、怖さの対象が抱えている背景が物悲しすぎて、良い感じです。2012/09/05
keroppi
49
人の心の奥底から、怪異が浮かび上がってくるのか。人への愛や欲望や嫉妬や悲しみや残酷さや…それらが儚い夢となって現れて消えていく。何処かで語られている昔話のように。2018/03/28
さっとる◎
45
夜がちゃんと夜なので光が尊く愛おしい。地面の穴には死体が埋まっているし穴がどこまでも深いならそれは井戸だ。旅は遠いし山には何がいるのかわからない。暗く深く険しい領域にはたくさんのヒトならざるモノがいる。そこに進んで足を踏み入れてちょっと覗いては恐ろしいとなかったことにし、あるいは魅入られ戻ってこれなくなったりする。人なんかやめちゃったほうが本当に大事なものがちゃんと大事に見えたりするのかもしれない。本当の暗さと怖さを失って、でもまだ向こう側があるって思ってる。音楽がそこから糸みたいに漏れてくるはずなんだ。2018/02/15