内容説明
恋するということは、なかば意識を持ちながら、甘美なまでにゆっくりと溺れてゆくこと―輝かしくもなまめかしい短篇小説集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あ げ こ
10
息苦しいまでのあかるさと嫌悪と快楽。狭い、酷く狭い。閉塞的で。密接していて。間隙のなさ。中和するもののなさ。ずっと濃い、濃いまま。快不快いずれも。薄まって行かない。弱まって行かない。そこで生きている。鬱陶しく、煩わしいまでに、濃いそこで。狭く、熱く、暑苦しく、煩く、鈍く、愚かしく、柔らかく、無神経に、無遠慮に、物憂げに、繊細に、生きている、溺れている、溺れてゆく。とめどない事。とりとめのない事。きりのない事。切れ間なく、区別なく、続いている事。続いて行く事。繰り返しである事。堆積して行く事。あてどない事。2020/03/17
zumi
8
あたしは、恋人と夫を同じ呼び方で考える、あの人って言葉でね。あの人っていう言い方は、ようするにここにいない人のことだーー。金井美恵子の短編集はいくつか読んだが、今まで読んだものとは雰囲気が少し違う気がする。というのも芳川泰久の解説があまりに的を射ているため、そうとしか読めないからだ。言葉のざわめき・平仮名のエクリチュールが持つ特質に目を向けた結果、このような短編集(バルト『明るい部屋』にちなみながら『あかるい〜』とする)になったのだろう。それ抜きでも「マティーニの注文の仕方」は文学・酒好きなら楽しめる。2014/02/12
ルジャンパール究一
0
やっぱり彼女は短編な気がする2017/01/09
ルミ
0
再読。ハムをハムたいの「豚」と、ボルヘスとブニュエルが登場する「マティーニの注文の仕方」が好き。 この本が単行本で刊行された頃「小説の愉しみ」と題された講演会へ行った。後半の質疑応答で若い女性が、最近のあなたの小説はおもしろくないと言い放ち、作家は誰でもそういう時期があるので長い目で見てやってくださいと苦笑した。 デビューから数冊の短篇集を偏愛していて、あとは惰性で刊行されるごとに購読していた私は内心同じことを考えていて、とても印象に残っている。2016/07/05
