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スローでたのしい有機農業コツの科学

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  • サイズ B6判/ページ数 286p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784822804909
  • NDC分類 615
  • Cコード C2061

出版社内容情報

有機農業30年の経験をつんだ農学博士の集大成。農業・家庭菜園・ガーデニングにとりくむ方の疑問とうまくいくコツが解明されます。


第1章 生きている土
  1 土とはなにか
       月には岩屑しかない
       土はどうしてできるか
       土は生きている
       土はつくられる
       肥沃な土とは
       究極は、不耕起をめざしましょう
  2 土の団粒構造をチェック
       団粒構造とは?
       農作業が楽になる
       誰でもできる団粒構造のみわけかた
  3 土を育てるには
       有機物を知ること
       どんな有機物がよいか
       有機物によって分解がちがう
  4 有機農業にたいせつな二つの法則
       第1の法則――木は木にかえし、草は草にかえす
       有機物と好き嫌い
       第2の法則――生き物には存在する意味がある
  5 育土の具体策
       草を生かす
       草はなんども刈る
       刈敷きの下は
       草は新鮮な有機物
       牧草を利用する
       鋤きこんではダメ
       刈敷きは、いいことずくめ
      植物
       マメ科
       イネ科
       緑肥作物の使いかた
       土壌生物の移植方法
  8 ボカシ肥のつくりかたと使いかた(農業者編)
       材料と注意
       つくりかた
       仕込みの方法
       ボカシ肥の使いかた
  9 ボカシ肥のつくりかた(家庭編)――生ごみを材料にする場合
  10 ボカシ肥の補足と注意事項

第2章 植物の栄養
    1 栄養のバランス
       栄養の意味
       水耕栽培と養分
    2 植物の必須元素
      (1) 炭素・酸素・水素
      (2) 窒素
      (3) リン
      (4) カリウム
      (5) マグネシウム
      (6) カルシウム
      (7) イオウ
      (8) 塩素
      (9) 鉄・マンガン・亜鉛・銅・モリブデン
    3 必須元素の欠乏と過剰症状
       症状と診断の仕方
       作物と土壌によって欠乏や過剰の出方はちがう

第3章 作物づくりのコツ
   1br>       タマネギ
         ふるさと/生育の特徴/施肥の注意点/タマネギ選びのコツ
       ニ ラ
       ラッキョウ
       ニンニク
   4 アブラナ科
       ダイコン
         ふるさと/間引きのコツ/根の障害の対策
       カ ブ
         ふるさと/生育の特徴/根の障害の対策
       キャベツ
         ふるさと/生育の特徴/じょうずに結球をさせるコツ
         外葉がたいせつ/種のまきどきもだいじ/効能と良品をみわけるコツ
       ハクサイ
         ふるさと/生育の特徴――ハクサイがまくわけ/結球のコツ
         育てやすい土つくりのコツ
       ツケナ類
         ふるさと/生育の特徴/ツケナの種類
   5 ウリ科
       キュウリ
         ふるさと/育て方のコツ/キュウリは疲れやすい
         栄養生長と生殖生長/芽摘みをじょうずにするのがコツ
       カボチャ
         ふるさと/1) はじめに
   (2) 朝の散歩でまなぶこと
   (3) 病虫害を避けるには
   (4) 耕種法とは
   (5) 虫
       天敵を利用する方法
       フェロモンの利用
       植物を使う方法
       その他
   (6) 病 気
   (7) まとめ

第5章 ぐうたらの独り言
   (1) 有機農業は異端
    (2) ぐうたら百姓のきっかけ
    (3) 自然は有限なのだ
    (4) 現代農業がみすごしているもの
    (5) 土は生きている
    (6) 土がくたびれたら?
    (7) 害虫の見えないミカン園
    (8) 環境保全型農業について
    (9) 21世紀の「土」の地平
    (10) おわりに

図版/著者自筆



はじめに

健康でおいしい野菜。それこそがわたしたちの健康を維持するために必要な食べ物として求められるべきものです。こうした野菜をつくろう、生産しようとしてとりくんでいるのが有機農業です。
 有機農業は、農薬や化学肥料を使わずに作物をつくる方法です。この栽培方法でもって日本各地で、そして世界中で、健康でおいしい、なおかつ安全な野菜や穀物・果物が生産されています。日本でも、有機農業の認証制度がはじまって、有機栽培であるという認証を受けた農産物がでまわるようになってきました。ところが、なかなか手にはいらないのが現状です。その理由は、有機栽培に手間がかかるし、病害虫の防除もふくめて、手がまわりかねるのが現状だからです。消費者のなかには、有機栽培でもって自分で野菜をつくってみたい、あるいは自給できるところまで自分で作物をつくってみたい、そういう思いをもっているかたもおられるのです。ただ、農薬や化学肥料を使わずに、どのようにして野菜を育てるのか、どうしたら土が肥沃になるのかといった基本的なことが、残念ながらわかりづらいのです。
 一方で、一坪農園や家庭菜園をされるかたがずいぶんとふえてきました。しかし、世話をすいがあって、健康でおいしい安全な野菜を、農薬や化学肥料を使わずともつくれるのだという確信にかわってきたのです。
 しかし、育てるのに手間がかかっては意味がありません。できるだけよぶんな手間をかけずに、誰にでもできるようなやさしい有機栽培の方法はないだろうか。それもしっかりとした裏づけを解説して。
 それが本書を執筆した動機だったのです。
 残念ながら、わたしの本をだしていただいた出版社がリストラされてしまいました。それも、二回です。手許に本がなくなってしまったあとからも、いろんなかたから、「本はもうないのか」「出版しないのか」「在庫をもってないか」と、手紙やファクスをいただきました。しかし、出版の糸口がみつからず、諦めていたのでした。それが、ふとしたきっかけで、京滋有機農業研究会の幹事をなさっている佐伯昌和氏に話をしたところ、七つ森書館を紹介していただき、またたくまに出版の話がまとまってしまったのです。この間余裕がなかったのか、わたしの口癖を忘れていました。
「リンゴは食べごろにならないと落ちない」
 やはり、時期というものがあるのだと、実感しました。
 今回、題名を『ぐうたら農法のすすめ』から『り困難で、労力が必要とされるため、全面的な実施には踏み切れない事情もあるのです。こうした状況をみてきたわたしにしてみれば、「手間のかからない有機農業はどうすれば可能だろうか?」という課題がずっとつきまとってきたのです。
 日本有機農業研究会が発足した、三十数年前。自然農法や有機農業をはじめたパイオニア農家は、言語に絶する辛酸をなめられたのです。村八分・縁者との義絶など、大学紛争もさることながら、すさまじい七○年代の幕開けでした。それでも、命に直接かかわる食料生産の現場としての農業だからこそ、どのような仕打ちを受けようとも、有機農業をつづけてゆかれたのだと思います。パイオニアのかたがたは、有機農業であることに誇りをもって、その辛酸を乗りこえてこられたのだと、思わずにいられません。
 そうしてパイオニア農家のかたがたは、農協や普及員からは白眼視され、農学からの徹底的な批判と無視に耐え、なおかつなんの支援もえられないままに、健康で安全な農産物の生産を目標として、遮二無二、ひたすら有機農業の地平を切り拓いてこられたのです。
 それでも、わたしが訪ねた折りに、ニコニコと微笑みながら、いとおしそうに作物をみやり、土界とばかり、わが家のまわりで跳梁しています。真っ暗な農道を帰ってくると、車にぶつかりそうな勢いで鹿や猪が道を横切り、おどかしてくれます。早朝には、雉の夫婦二つがいが農地を散歩しており、「ケンケーン」と甲高い声で、目覚ましがわりにおこしてくれます。その声に誘われるように大急ぎで長靴に足をいれ、朝露にしっとり濡れた畑にゆくと、背丈よりものびたクロタラリアに赤トンボが休んでいました。羽が朝露に濡れ、まだとべそうにありません。朝の太陽が山の際から最初の一閃をなげ、ひんやりした畑がきらきらと輝くとき、すべてがいとおしくわたしの眼に映える至福のひとときです。
 生きていてよかった。毎朝そう思えるのです。
 それというのも、住みついてまもなくガンが発覚したのです。それ以前の数年間に、ひどいストレスを職場で受けていたからだと思います。病気とは、まさしく気を病むものなのだと、そのとき思わされました。そのガンは、膵臓という致命的な箇所に発生し、あと三年の寿命という死刑宣告を受けたのです。奇しくも「気」の治療だけで、完全に治癒したのですが。
 雑草・病原菌・害虫を差別しないという、有機農業にたいするわたしの価値観からは当然な本書を執筆する五年ほど前から、講演を依頼されたときは、かならずレジュメを書くという習慣をつけていました。以来、書きためていたレジュメをまとめて全日本農民組合京都府総連合会の山中高吉名誉会長にお送りしたものが松本氏の目にとまり、雑誌「進歩と改革」に連載させていただくことになったのです。一九九九年一月からおよそ一年間でした。
「どんどん書いたら」。そういって、落ち込んでいたわたしを励まし、脱出口を開いてくれたのは、京都大学農学部図書室の大月健氏でした。彼が主宰する同人誌「唯一者」が、わたしの危機を救ってくれたのでした。
 その後、有機農業の流通、販売をしている「ポラン広場」の今井登志樹、福地博美の両氏にも、「月刊ポラン」を通じてたいへんお世話になりました。こうしたみなさんのおかげで、わたしの拙い文章が読みやすくなったのです。
 最後になりましたが、本書の初版『ぐうたら農法』にこぎつけたのは、ぱぴるす舎の貝塚隆俊氏と人類文化社の中楚克紀氏のご尽力のたまものです。また、あらたな出版にあたっては、佐伯昌和氏と七つ森書館のみなさんとの出会いがあったからこそです。こうした出会いのすべてに感謝せずにはいられません。あり培を、スローライフとともにはじめてみましょう。

   二〇〇四年 秋

                 日吉町胡麻の寓居にて   西 村 和 雄

内容説明

農業・家庭菜園・ガーデニングにとりくむ方がたへ。有機農業30年の経験をつんだ農学博士の集大成。うまくいくコツが解明されます。

目次

第1章 生きている土(土とはなにか;土の団粒構造をチェック ほか)
第2章 植物の栄養(栄養のバランス;植物の必須元素;必須元素の欠乏と過剰症状)
第3章 作物づくりのコツ(作物をうまく育てるには?;ナス科 ほか)
第4章 病気、虫について(朝の散歩でまなぶこと;病虫害を避けるには ほか)
第5章 ぐうたらの独り言(有機農業は異端;ぐうたら百姓のきっかけ ほか)

著者等紹介

西村和雄[ニシムラカズオ]
1945年、京都市生まれ。京都大学農学部修士課程修了。同大学農学部助手などを経て、現在、京都大学フィールド科学教育研究センター講師。専攻は、植物栄養学、植物地球化学。京都大学農学博士。(財)自然農法国際研究開発センター理事、安全農産供給センター顧問、京滋有機農業研究会幹事
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

里のフクロウ

0
肥沃な土壌の育成をテーマに勉強中、有機農法をまとめた本書から土壌に関わる考えを知りたく手にした。5章に区分されているが、関係しそうな第2章までを読んで残りは斜め読みをさせてもらった。第1章2節までの土壌についての説明は簡潔で非常にわかりやすい。ところが育土の実践的内容は必要内容は網羅されているが、項目羅列となっていることが難点である。理論を技術として展開する工夫が求められると感じた。有機資材を投入しただけでは団粒土壌の育成は困難であることを実感してきたので。偏りが無く必要事項が網羅されている良書と思う。2017/02/26

yasu kash

0
この本は、すごい。 「慣行農法とは、複雑系の自然の営みの中から人間が管理しやすそうな部分だけを切り取って分かったフリをして作り上げたものだ。」 ・・・とは著者は言っていないが、まあそういうことだな。 とにかく、自然の力をうまく引き出してあげることで、地球にやさしい、自然(野菜だけでなく草や虫を含む生き物全て)にやさしい、ズボラで楽しい有機農業ができるんだ、という実例を示してくれている。手元に置いて何度も再読すべき本だと思う。畑、やりたくなるなあ。2013/04/13

とこまた

0
この本はためになる。何よりも実践的である。わが家の農作業に一切手出し口出ししないくせにこうして頭でっかちになっていくのだ。この本を読み「ああ、農業やってみたい」と思ってしまった。すでに兼業農家なんだけど。2005/05/03

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