内容説明
戦前の日本で、中国の現代史にもっとも深く関わった知識人の一人である山上正義は、中国の代表的文学者魯迅とも親交を保ち、林守仁の筆名で『阿Q正伝』をごく早い時期に日本に翻訳紹介した。新聞連合社の中国特派員としてかの地で、国民革命の高揚と挫折を目のあたりにした山上は、それらの歴史的事件を記録し発信したすぐれたジャーナリストでもあった。中国革命の観察者、支持者、協力者としての山上正義の埋もれた生涯を掘り起すことは、現代の日中関係の原点を照射することにほかならない。二十年前の初版に、新たに発掘された資料を盛り込んで大幅に手を加えた。
目次
序章 革命の根拠地へ
「暁民共産党」事件
革命の広東
魯迅を語る
「支那を震撼させた三日間」
中国左翼文芸運動の中で
「国際プロレタリア叢書・阿Q正伝」
ゾルゲ事件
北京から東京へ
日中戦争、しのびよるものへの不安
終章 その死