内容説明
白人のクズと蔑まれる南部の貧困階層に、15歳の母の私生児として生まれ、幼いころから継父の性的虐待にさらされつづけた少女。作家ドロシー・アリスンは、物語を唯一の楯にして虐待のなかを生きのび、書くことでその記憶と向きあってきた。母への愛憎。美しい妹への嫉妬。絶望に身を滅ぼした一族への哀惜。レズビアンとしての不器用な愛の軌跡…。すべてを語りおえたとき、新しい物語が始まる。ひりつく叫びが生の鼓動と響きあう、詩的モノローグ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
21
アメリカで白人貧困層で私生児として生まれた作者の自伝。貧しくとも家族が結束して生きるとは無縁の世界で、そこに生まれた女の子を待ち受けるのはレイプやアルコール、早すぎる妊娠など。作者は継父に5歳からレイプされ自分を愛せないまま生きる。「自分を悪だと思いつつ、無垢でいるのはむずかしい」。何もかも話して起こったことを話して、とりわけ自分が自分をどう思っているか話して、それについて誰からも意見されたり何か思ってもらう事はないのだ、という事を自分も自分に関わり誰もが知らなければならない。その長い努力について2023/06/15
星落秋風五丈原
5
映画『ウィンターズ・ボーン』に登場するようなホワイト・トラッシュ家庭の私生児として生まれた筆者が生い立ちを赤裸々に語る。「自分の体験と同性愛傾向とは関係がない」と主張するシーンが印象的。確かに性的嗜好を何かの被害のように言われてしまってはたまらない。あまりにも過酷な現実に蓋をして物語る癖がついていたために創作の才能が開花する。2014/05/22
ipusiron
0
1998/7/14読了
mori-ful
0
1949年にサウスカロライナの貧困白人家庭で生まれたレズビアン、フェミニストの自伝的エッセイなのだが、そう一言(『創世記』の「衣」だ)ではいえない重さがある。「わたしの一族の歴史は、死と殺人、悲嘆と否認、憤怒と醜さーー女たちはなおさらだ」「美しいというのは大変なことだ。美しいというのはろくでもないこと」。空手を八年学んだというエピソードが意外で面白かった。「わたしの収穫はといえば、努力しだいでどんなことが可能か、何ができるかわかったこと。体を自分のものとして認識できたこと」 2023/07/15