出版社内容情報
竹下節子[タケシタセツコ]
内容説明
世界は驚愕し、民衆は夢を抱いた。夢を現実化する革命児か、はたまた新たな抑圧を企てる独裁者か。神たろうと世界史の中心舞台に躍り出た、ナポレオンの叡知と野心。権力・宗教間の苛烈な暗闘の淵から浮上する、ヨーロッパ精神の核心を活写する。思想史研究の新地平。
目次
第1部 ナポレオンと神―創造者か支配者か(ヨーロッパ精神世界のナポレオン;ナポレオンとローマ教皇;ナポレオンの宗教観;ナポレオンと一神教;ナポレオンの「十字架の道」)
第2部 そして、神になる(ナポレオンと二つの教会;教皇と皇帝と王;「人が神になる」可能性とキリスト教;最後のレトリック)
第3部 ナポレオンの聖蹟(ナポレオンと秘教;ナポレオンとエジプトの神々;「宇宙の大建築家」ナポレオン;ナポレオンとヒトラー;ナポレオンと日本人)
著者等紹介
竹下節子[タケシタセツコ]
比較文化史家・バロック音楽演奏者。東京大学大学院比較文学比較文化修士課程修了。同博士課程、パリ大学比較文学博士課程を経て、高等研究所でカトリック史、エゾテリズム史を修める。フランス在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
76
戦争の英雄であり、政治的に絶対の存在であったナポレオン。宗教改革の時代に登場したこともあり、キリスト教とも関わりがあったことがわかります。無神論を掲げ、フランスを統一しようとしたその手腕からは、自らが神となることすら考えていたことが伺えました。神と聖性を追求していく様からも明らかでしょう。そして、ナポレオンが求めたその先には何かあるような気がしてなりません。そういう意味でも興味深い人物です。2016/12/16
trazom
2
「物質主義者、教会の略奪者、無宗教、無信心、反教権主義者」と言われるナポレオンと神という目の付け所がいい。「キリスト教を、異端者たちの手から取り戻す」として、ナポレオンとピウス7世の利害が一致してたのに、独裁者になったナポレオンが「自分が神になること」を目指し対立する。更に、ナポレオンは、最後に、イエス・キリストであろうとしたと竹下さんは言う。エルバ島から脱出して奇跡の復活を果たすのは、十字架の後に復活したイエスだと。「もしキリストが十字架で死ななければ、神になっていなかった」とはナポレオンの言葉である。2017/01/15