内容説明
マンドレーク、アヘン、ベラドンナ、ニガヨモギ、ヒヨス、ヘンルーダ…。古代ギリシア・ローマ人はさまざまな向精神性薬物を自在に活用し、芸術・思想・文化を生み出す霊感の源としていた。古典学と細菌学を学んだ気鋭研究者が、アカデミズムのタブーを越えて歴史の空白に迫る、挑戦の書。
目次
1 古代世界は苛酷だった
2 どんな麻薬を使っていたか
3 ギリシア人もローマ人も麻薬常習者だった
4 プロメテウスの至福感
5 月を引きずり下ろす
6 神の贈り物
7 哲学者は魔術師だった
8 麻薬とデモクラシーの関係
エピローグ 幸福の追求
著者等紹介
ヒルマン,D.C.A.[ヒルマン,D.C.A.][Hillman,D.C.A.]
アリゾナ州のトゥーソン市生まれ。ウィスコンシン大学で細菌学の理学修士と、古典文学の文学修士および博士号(Ph.D.)を取得。専門は「西洋古典期の薬理学」。これまで、学会誌「Pharmacy in History」などに研究成果を発表してきた。『麻薬の文化史―女神の贈り物』が第一作。現在、妻や子供たちとウィスコンシン州マディソン市に住む
森夏樹[モリナツキ]
翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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in medio tutissimus ibis.
3
著者は現代社会が麻薬にアレルギーに過ぎると嘆くが、自身も麻薬に対しての態度を決めかねているようだ。最初の一章をかけていかに古代が過酷であり麻薬の助けが必要であったかを説いたかと思えば、徐々に古代の麻薬の普及に述べるについて牽強付会さを増して行き、ついに八章に至って民主主義と自由の名の下に麻薬を肯定しようとする。果たして、正しいと信じていることを書いているのか、書いていることを正しいと信じたいのか。その点を差し引いても、古代世界の知られざる一面に新たな光を投げかける刺激的かつ説得力のある説であるとは思うが。2016/06/12
ととろ
3
(古代ギリシア・ローマにおける)麻薬の文化史です。著者曰く、学究の世界では「古代人達は貴賎を問わず誰にも麻薬の常用が社会的に是認されていた」との見解がタブー視されているようだ。彼らは苦しみから逃れる為に、或いはムーサイやアポロンの天啓を受ける為に、若しくは医療行為を目的として、当然のものとして麻薬を服用していた。それは現代まで学究の規範とされる偉人達にとっても例外ではなかった。この事実がタブー視の根拠だそうで。本著の提示する史料の記述を読む限り、古代の麻薬は本当に「生活必需品」であったのであろう。2014/11/10
モットヒカリヲ
2
アメリカでは一部の州でマリファナは合法で、日本は大麻を栽培するだけでニュースで取り上げられるほどマリファナは違法。それを踏まえると、日本人は麻薬に対しては悪い印象しか持っていないだろう。この本は日本人のそんな凝り固まった頭を柔らかくしてくれると思うな。麻薬が芸術家にインスピレーションを与えると考えられていて、禁止されていなかったことは興味深い。2012/11/22
さとうよ
2
古代史+麻薬ってのは西欧的にはタブーであることが分かっただけでも面白い。日本でもドラッグに関する歴史は割りとタブーですよね、特攻隊とかがせいぜいか。人間社会が常にドラッグを必要としていることは間違いなく、それが古代においても同じことだった。西欧古代史に明るくない私が得た知識はこの程度2012/09/11
tsuneki526
2
古代ギリシャ、ローマの偉大な業績は麻薬のかかわりなくして語ることはできないことを多くの資料を示して述べた労作。考えてみれば麻薬が悪とされるようになったのは中国の阿片窟や阿片戦争がきっかけではなかったのか?今、悪とされているから、過去においてもそうであったとするのは不自然であると考える著者のような人がもっとあらわれてほしいものである。2012/05/03