出版社内容情報
2023/7/14―宮﨑駿監督の『君たちはどう生きるか』が公開された。公開後一週間足らずで興行収入20億円を突破するんど、歴代の名作たちと並んですでに「社会現象」の兆しを見せている。本特集ではさまざまな分野の視点からその深奥にわけいりたい。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
N島
16
宮崎駿の最新作『君たちはどう生きるか』の評論集。寄稿者全員が現代思想のトップランナーにして、諸分野に一家言持つくせ者揃い。様々な視点から巡らされる自由な考察に小生は思わず胸をときめかせてしまいました。各々芯をついていながらも、十分には語り尽くせていない感があるのは、作品の複雑精緻な構造によるものか、それとも監督によって張り巡らされた悪意の落とし穴によるものか…。本作を読み説こうと傲慢な野望を抱く方々にはお勧めしませんが、進んで隘路に迷い込み、壁に落書きする事を楽しめる方にはお勧めできる一冊です。2023/10/26
百年の積読
2
玉石混淆ながら読ませてくれる評論の方が多かった。特に面白かったのは能楽師安田登氏の評論。宮崎アニメの構造は能に似ているという内容で、最初は牽強付会過ぎないかと思ったが、おそらく全てのファンタジーに共通する重要な指摘だった(ただ、結びの「この映画母親に執着し過ぎでねえの」という指摘には、マザコンにそんなことを言ってもしょうがなかろうとは思った)。その他今作の断片性をドイツロマン主義に結びつけて論じたのや、ジェンダー論から論じたものも面白かった。みんないろんな切り口を持っている。今作を色んな角度から楽しめた。2024/01/04
ひろ
1
過去の宮崎駿作品との比較という縦の軸、同時代性という横の軸、そして建築・西洋画・現代思想などアニメでも同時代でもないナナメの切れ込み、多様な論点から本作が語られる。近代における小説は「世界」の客観性/主観性を統合するべく書かれた、そのことに自覚的である小説の『君たちはどう生きるか』からタイトルを拝借したのは、まさにそのためであるとし、本作の「世界」の混沌こそが魅力であるとする坂口周の論考は私の読みとかなり近かった。また“動きすぎる”ことがアニメーションへの自己言及であるとする伊藤潤一郎の論考も面白い。2023/12/15
さゆう
1
物語よりも世界観を表す印象的なシーンを楽しんだ二時間でした。宮崎駿は著書で「映画的体験というのは、その瞬間しか見られないから生まれるものなんです。ストーリーは全部忘れてしまったのに、印象だけは心に残っているとかよく意味はわからなくても「あれはなんだったんだろう」とずっと思い続けているとか、そういうのが映画的体験です」と語ります。「わからなかった/わかった」で安易に切り捨てず、思い続けるのも楽しみ方なのですね。その作業を30名を超える方々が本書で支えてくれます。個人的には山内氏と山氏が好きでした。2023/11/18
みのり
0
優れた創作はこうも人々を刺激し、新たな創作活動に向かわせるのだな、と痛感させられた。自分もこの映画を観て様々な解釈の欲望に駆り立てられたが、みんなそうなんだろうな。2023/12/01