内容説明
原発存続vs.原発廃止―国民的合意形成は可能か。「絶対安全」と言われたフクシマ原発事故の原因は、技術体系と責任制度のミスマッチにあった。技術の暴走はなぜ起こり、どうすれば止められるのか。原発事故の原因究明から復興の倫理まで、未来世代への責任という視点から原発問題を考える。
目次
第1章 自然の合目的性について
第2章 原子力発電のコスト
第3章 確率論的合理性の吟味
第4章 「安全」と「安心」の底にあるもの
第5章 過失責任と無過失責任
第6章 「原子力ムラ」の存在
第7章 国家と原子力
第8章 情報とコミュニケーション
第9章 原子力問題に関する国民的な合意形成は可能であるか
第10章 復興の倫理
著者等紹介
加藤尚武[カトウヒサタケ]
1937年、東京に生まれる。兄、加藤尚文(故人)は労働問題の研究家。叔父、小暮政次(故人)はアララギ派の歌人。1960年、東京大学教養学部学生として安保闘争に参加。自然弁証法研究会で板倉聖宣氏らと知り合う。1963年、東京大学文学部哲学科を卒業。東京大学文学部助手、山形大学教養部講師・助教授、東北大学文学部助教授、千葉大学文学部教授、京都大学文学部教授、原子力委員会専門委員、鳥取環境大学学長、東京大学医学系研究科特任教授を歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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samandabadra
2
今年も正月から災害論の本を読む。技術論の視点ではなく、哲学の視点のもの。55頁以降のナイトの理論を根拠とした議論。71頁の完全義務、不完全義務。80頁以降の自然主義の破綻の議論。さらに第8章の情報とコミュニケーション、第10章の復興の倫理の議論などどれも勉強になった。2017/01/01
Sada
1
中立的な立場で原発の安全性についてわかりやすくひもといてくれた。損害の賠償は人類の存続につながる問題なので無条件に行われるべきだと痛感した。設計段階で安全性の確保に注力してしまった結果、事故発生後の策はおろそかになったくだりは、鋭い指摘だと思った。2012/06/14
山一工房
1
とても良い本である。考え方の基本的な元となるものがたくさん見つかる。原発というもののリスクをどのように考えればよいのかということの考え方の良い指針になった。2012/06/12
kan
1
「環境倫理学のすすめ」著者による、福島原発事故の哲学問題としての著述。 「有能で誠実な人が合理的だと信じていた原則に不合理が潜んでいる」、合理と非合理、偶然と必然、過失責任と無過失責任、安全と安心、完全義務と不完全義務など・・・術語定義の厳密化のみでも問題の明確化ができる。2012/03/28