内容説明
「詩学」から「実存」へ。荒地派を中心に第一次戦後派の詩の世界を戦前の都市モダニズム詩の、継承と切断として読み直す新しい研究ステージ開拓の書。
目次
1 戦後詩人の戦中と戦後―表現意識の継承と切断(都市モダニズム詩からの出発;「大東亜」幻想と「純粋なエスプリ」 ほか)
2 戦争詩・戦後詩の基本資料―図版とガイド五〇冊(若いモダニストたちの挫折と死;戦時下のアンソロジー ほか)
3 戦後詩の言語空間―一九五〇年代末までの軌跡(鮎川信夫―“戦後詩”の生成の場としての『純粋詩』;安東次男―マチエールとしての言葉 ほか)
4 水先案内(戦後詩人作品年表(一九三五~一九五九)
参考文献一覧)
著者等紹介
和田博文[ワダヒロフミ]
1954年生まれ。神戸大学大学院博士課程中退。現在、東洋大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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3回目。こういう包括的な研究は本当に少ないので助かる。第1部が「荒地」を中心とした胎動期の動きを、第2部は、戦後詩を知る上で必読な必要参考文献の紹介(と、ミニコラム)第3部は、戦後詩を代表とする詩人たちの論文を収録している。しかし、今一番ホットなのは、たぶん、「列島」を中心とした「サークル詩」だろうし、この前、ある人に言われたが、「荒地」神話というもの出版社によって作られたものではないかと、そういう意味では「列島」はやや不当な扱いかもしれない(紹介されているのは関根弘だけ)2017/07/12
2
再読ではあるが、その密度に息苦しさを感じるほどである笑 『荒地』が戦前の『荒地』への回帰というよりは、『LUNA』『LE BAL』への回帰、しかも、『荒地』の前に『純粋詩』が差し込まれていることを完全に見落としていた(そして『純粋詩』は『荒地』のほかに『列島』『地球』の母胎となる) このことについてもっと突っ込んでいるのは収録されている杉浦静の「鮎川信夫―<戦後詩>の生成の場としての『純粋詩』」であり、興味深い。2017/04/28
午後
1
戦前・戦中の戦後詩人の姿や扱う概説と、戦後に発表されたエポックメイキングな詩集の紹介、代表的な各詩人論など。荒地に偏りがちな傾向のある戦後詩の本で、『列島』の関根弘に一節を割いている。荒地派の詩人は、戦争詩に加担した前時代の詩人達を論難し、モダニズムを主体の内面性を伴わない空疎な言葉遊びとして断罪するところから出発した。編者は未だにモダニズムが不当に軽視され、十分に研究されていないとする立場から、荒地派の読み直しを図る。木原孝一論が挑発的な内容だが、彼の代表作に触れないのは流石に片手落ちではないか?2021/06/08