内容説明
本文研究の目的と範囲は、拠るべき絶対的な本文の追求というものに限られるわけではなく、一つの本文の制定・校訂という作業によって必然的にこぼれ落ちることになる、底本となったもの以外の本の本文、みせ消ち・書き入れをも含めた諸本文が持つ可能性をもすくいあげることによって、あらたな読みと享受のあり方をさぐることにもあると言ってよいだろう。
目次
『伊勢物語』散佚本の本文について
伊勢物語諸本論とその本文
『伊勢物語』本文と古注
伊勢物語の文体と表現―古今集の詞書、左注との関係をとおして
「用心」の歌―『伊勢物語』二段管見
「人しれぬ」と「心やむ」―伊勢物語五段の表現と意味
『伊勢物語』第二十六段の解釈―その“絶対領域”と“相対領域”
『伊勢物語』の「をとこ」をめぐって
成立論から相補論へ―新世紀の伊勢物語研究