出版社内容情報
京都清凉寺に安置される国宝・釈迦如来像は日本の僧・奝然により中国からもたらされた
像で、生前の釈迦の姿を写したと伝える優填王思慕像を模して刻まれたものだ。異国風の
顔立ちや実人的な身体表現をもち、胎内に五臓模型のほか多くの品々を納めた本像は、
釈迦の代理たる生身の仏として広く注目と崇敬を集めた。我が国の彫刻様式とはあまりに
異質であり、その為にかえって「和様」の美意識の確立に大きな作用を及ぼしたと考え
られる本像の、詳細な外観写真および納入品を多数掲載し、造立の経緯や日本文化への
影響を詳述する。
【主要目次】
■はじめに
■奝然の旅程と釈迦像造立の経緯
■清凉寺釈迦像の概要
・形姿の特徴/・品質・構造/・光背・台座
■優填王思慕像
・優填王造像譚/・各地の優填王像/・清凉寺像原像のすがた/・日本における清凉寺像前史
■銘文と納入品
・銘文の概要/・納入品の概要/・仏に魂を籠める/・五官に訴える品/・彼岸への回路/
・北宋式作善
■釈迦像の受容
・五台山文殊/・最澄自造薬師像―擬似優填王像―/・大安寺釈迦像―第二の優填王像―/
・河原院釈迦像の造立/・模造を造るということ/・北宋式作善としての造立
■初期清凉寺と釈迦像
・大清凉寺構想/・文殊像の再請来/・奝然のもたらした文物/・台座改造と光背の追加
/・十大弟子像の造立
■おわりに
・図版目録
・参考文献
・附論
1、摸刻の集う寺、清凉寺
2、日本に伝わる宋彫刻
3、清凉寺式釈迦像雑記