内容説明
生の表裏に宿る絶えまない対決の相に、接近と離反の視線をあてる。韻律と形式の新たな試みをまじえて、『食うものは食われる夜』以後の詩境を切りひらく、最新詩集。
目次
両目をあやす黒と白
隠す葉
鳩の皿
熊
扇男
知らない人についていく
沼
桃
黙契
角
突貫工事
太陽を持ち上げる観覧車
ばらばらの虹
添い寝
古い肉
腕を駆けてくる狼
著者等紹介
蜂飼耳[ハチカイミミ]
1974年6月3日、神奈川県生まれ。詩集に『いまにもうるおっていく陣地』(紫陽社・1999)第五回中原中也賞、『食うものは食われる夜』(思潮社・2005)第五六回芸術選奨新人賞がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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市太郎
56
僕は普段、詩をあまり読まないから正しい感想は言えない。この人の言葉は一行、一行、一文字、一文字考えてしまう。いったい何を言いたいのか、どういった状況なのか。全くわからない事も多いが、こんなに言葉というものと向き合えた機会も無い。言葉は人に伝えるものだし、伝わらなければ意味がないと思うからだ。しかし、この人の言葉は違う。その肌触り、質感。時々えぐられるような事もあれば、ぞっとする事もある。深い悲しみもある。孤独もある。そして温かさもある。この人と物質との距離感が深い。それは読む僕の心に深く浸透していくのだ。2014/12/02
allite510@Lamb & Wool
6
菊地信義の美しい装丁に惹かれて入手。「記号とは心像と概念の結合である」であるのであれば、その二つの結合前、または結合する瞬間の前記号的な言葉を取り扱うことも詩の役割であるのかもしれない。そうやって意識的に言葉や物語を解体しながら原初的な恐怖や不安に近づいていこうとしているように感じる瞬間もあるのだが、到達しているのは現代的なかすかな不安、違和感、曖昧さであるような気がする。それならば、もっと他の方法で上手く表現しているものもあるように思うのだ。端的に言って、あまり脅かされることがなかった。2019/04/01
Roy
5
★★★★★ やっぱり蜂飼耳の詩集は好きだ。生きる姿勢の良さを感じ、何気なく読んでいても、はっとさせられる言葉が無数に転がっている。「両目をあやす黒と白」「知らない人についていく」「扇男」「角」「ばらばらの虹」「古い肉」「腕を駆けてくる狼」が好き。2008/11/26
君吉
2
隠す葉によって隠されるものが詩集を貫くように絶えず存在しているように思えた。いない存在は見つからない正体でそれは散文だろうと行換えだろうと形式お構いなしに一応きっとそこにあるのだ。そのまま、あるべき姿そのものへの懐疑、前提化された核心への疑問を感じた。心地よい飛躍力と躍動感。漠然と不安するのではなく潔く疑問することですっきりするこの感じ。とても面白かった。2010/10/12
THE WATERY
2
自分が持っていた感覚とは異なる「新しい感覚」に出会い,少したじろぐ。「桃」・「角」・「太陽を持ち上げる観覧車」が好き。2010/02/02