内容説明
不可能性の極点で詩の存立を問いつめ、半世紀にわたって未踏の詩的領域を拓きつづけた入沢康夫の、詩への深い信憑と透徹した認識をあますところなく伝える、待望の散文集成。
目次
1 わが出雲・その他―主として回想的に(私の出雲;一枚のレコード ほか)
2 詩の方位―主として随想的に(ボルヘスむだばなし;奇妙な図書館群―昼下りの閲覧机で見た夢 ほか)
3 詩にかかわるあれこれ―主として時評的に(詩にかかわるあれこれ;豊崎光一氏を悼む ほか)
4 ハーン・ネルヴァル・賢治―いくぶんか考証的に(永遠の遊行びと;鍵と鳥と角灯―ネルヴァルの死んだ場所 ほか)
著者等紹介
入沢康夫[イリサワヤスオ]
1931年島根県松江市生れ。東京大学文学部仏文科卒。1955年大学在学中に詩集『倖せそれとも不倖せ』を出版。以後、『季節についての試論』(1965年、H氏賞)、『わが出雲・わが鎮魂』(1968年、読売文学賞)、『死者たちの群がる風景』(1982年、高見順賞)、『漂ふ舟』(1994年、現代詩花椿賞)などを執筆
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かふ
14
詩のエッセイ。入沢康夫が松江出身で、出雲大社や神話のこと、さらにラフカディオ・ハーンの思い出とした回想風のエッセイから現代詩についてのエッセイや現代詩人たちの去就や仕事などを述べた章。最後はまとまったネルヴァルについて詳しい解説があった。この人はフランス象徴詩が専門なのだろうか?ちょっとつかみ難い詩人だった。現代詩について杞憂するところは共感できるというか、なかなか現代詩も大変そうだ(ほとんど読まないし、興味ない人が多いと思う)。ナルシスの話が良かった。エコーについては知らなかった。2023/09/14
misui
7
散文集成。拾遺的な印象は否めないが面白いトピックスが拾える。自分が気になったのは、入沢氏の名作「失題詩篇」が元は16篇の連作中のひとつだったこと、詩への信頼とその原点にある感動に度々言及していること、本文決定(校訂)の困難さについてだろうか。それとネルヴァルの死んだ場所についてはこれ以上ないのではというくらい詳細で、現場を描いたものとして残っている5つの図版はありがたかった。こうして見てみると、原点の意識と追求という姿勢が窺える。2015/02/28
渡邊利道
2
70年代から世紀末に至るエッセイを他人の手によって選ばれたものを集めて作ったエッセイ集。息の長い思索の跡がうかがえるが、何より面白いのは自作に対する意図や試みを語ったもの。散文詩についてや叙事詩についてのものなども、その一環として興味深い。2019/02/06