〈昭和〉のクリティック<br> 探偵のクリティック―昭和文学の臨界 〓秀実評論集

  • ポイントキャンペーン

〈昭和〉のクリティック
探偵のクリティック―昭和文学の臨界 〓秀実評論集

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 249p/高さ 20X14cm
  • 商品コード 9784783715023
  • NDC分類 910.26

内容説明

小林秀雄、横光利一、稲垣足穂、江戸川乱歩、小栗虫太郎から、平野謙、吉本隆明、磯田光一まで、〈昭和〉の文学や批評の中で確立された〈自己意識〉という呪縛の構造を読み解き、その臨界点を明示する。時代とテクストの迷路を回遊する探偵のイレギュラーな知が、労働に奉仕するレギュラーな知の在り方を打開する。新しくかつ自在、いかがわしくかつペダンティックな批評宣言。

目次

序章 自己意識の覚醒(自己意識の覚醒―昭和文学の臨界)
第1章 自己意識の酷使―横光利一(「純純小説論」まで;『上海』まで;書く「機械」)
第2章 AerO‐Plane―稲垣足穂(前衛と遅れ;性と死)
第3章 探偵のクリティック(探偵のクリティツク―批評の系譜)
第4章 貴種流離のパラドックス(貴種流離のパラドックス―磯田光一と「昭和」)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

mstr_kk

7
再読してみて、知的な面白さは否定できないものの、疑問が多い本でした。 ヘーゲルの「主」と「僕」の弁証法の図式を使って、昭和の文学について批評しているのですが、図式の濫用ぶりが甚だしく、アナロジーに説得力が足りていないように思います。だいたいの言いたいことは分かるし、文章もかっこいいけれど、ひとつひとつ論旨を追ってゆく中で、強引さが目立ちます。「批評」だからこれくらいアクロバティックでも良いのでしょうが、もっと説得力のある、というか単に分かりやすい書き方はなかったものでしょうか。2014/09/28

Z

4
名著。様々なる意匠(小林秀雄)を自己意識の問題として、小説的書く主体を考察する横光利一論、書く対象によって主体が析出される様に焦点を当てる稲垣足穂論、小栗虫太郎論。どの文章もスリリング。表象の臨海、全体性を俯瞰しうる視点を小説が突き崩すことに小説的な言葉の強度を認める著者による力動的な批評。この批評の枠組みは文学が自己形成の手段たりえた昭和までで一区切りであり、平成以降の文学を語るとすれば別のパースペクティブで論じる必要があると思うが、著者は昭和批評の臨海点を示していると思う。著者の文学的著作が文庫、 2022/09/10

む け

3
相変わらずすが秀美の文章は読み辛い。でもそれを打ち消すくらいの面白さは充分に備えている。理論の骨格となるのはヘーゲルの主人と奴隷の弁証法だが、これが言説と物語内容、男根的速さと遅れ、そして知-労働を戴くマルクス主義対都市遊民としての探偵的イレギュラーな知と変奏されて語られていく。使われる題材は横光利一と稲垣足穂、小林秀雄と最後に磯田光一が出てくるが、他にも江戸川乱歩にも言及したりやや唐突に小栗虫太郎を持ち出してきたりして、やっぱりこれは「探偵のクリティック」というタイトルがふさわしい本なのだろう。2013/05/30

 

2
再読。絓の試みが、「奴の悪循環」(『小説的強度』)のループを肯定するのではなくて、「内-外」というに二項対立に回収されない「外(の外)」を諸言説が機能不全に陥り崩壊してゆくまさにその瞬間に絶えず導入し続けることであると言える。例えば、「批評家の祖」としての小林秀雄に探偵的な知(警察/探偵/犯人……)を見出しながらも、レギュラーな警察的知に回収されてゆく批評に対して、限りなくペダントリーを累進させることで「痴呆」に到達させようとする小栗虫太郎を対置させる戦略であると言える。2020/08/02

NICK

2
大変スリリングな批評だった。ヘーゲル哲学はあまり知らないのだが、ともかく「主」「僕」の構図を稲垣足穂のA感覚論や探偵小説の構造に適用し、かつそれを脱構築するという内容。きっとこれらは脱構築批評だと思うのだが、これくらいの厳密さがあれば脱構築(笑)と揶揄されることもないのだろう。2010/12/09

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/160405
  • ご注意事項