出版社内容情報
自意識放下のよろこび
枝とともにゆれる葉は
なぜそこを離れてもゆれやまず、
途切れのない空気をひととおりにおりてくる
道であるのだろう。
(「希望」)
「貞久さんの詩の、その奇妙な世界は、と言ってみて、はて?、と絶句してしまう」(小長谷清実)。清新なウィットに始まり、「明示法」による知覚体験の記述の試みへと至る軌跡。既刊6詩集中『リアル日和』『空気集め』(H氏賞)『石はどこから人であるか』『明示と暗示』を全篇収録。解説=支倉隆子、阿部嘉昭、江田浩司、白井明大
貞久 秀紀[サダヒサヒデミチ]
著・文・その他
内容説明
清新なウィットに始まり、「明示法」による知覚体験の記述の試みへと至る軌跡。既刊6詩集中『リアル日和』『空気集め』(H氏賞)『石はどこから人であるか』『明示と暗示』を全篇収録。
目次
詩集“ここからここへ”から
詩集“リアル日和”全篇
詩集“空気集め”全篇
詩集“昼のふくらみ”から
詩集“石はどこから人であるか”全篇
詩集“明示と暗示”全篇
拾遺詩篇
散文
作品論・詩人論
著者等紹介
貞久秀紀[サダヒサヒデミチ]
1957年、東京都江戸川区に生まれる。町田(8年)、堺(20年)、大阪(5年)をへて奈良の生駒山麓に移り住む。20代終わりから詩作と投稿を始め、1990年、「詩学」新人。『空気集め』(97年、第48回H氏賞、思潮社)。近年は、写生の可能性を追究している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夜間飛行
184
行の切り方が面白く語りかけてくる。《ひとり/のときひとり並んでみよう/そうおもうことがあった/と/並べるようにおもわれた/木や/そらにではなく/全体に/けれど/みずからが/全体にふくまれるかぎり/並べないようにおもわれた/桑をとりにゆき/ひとり/口をよごしている/ひとりよごれていると/ひとりでも/群がることができた》…「ひとり並ぶ」「全体に並ぶ」ことをめぐって何かが現れてくる。《よごれたまま/しずかにあおむいている/と/全体/をみずからがふくんでいる/そんなふうにおもわれて/いつまでも/並べないのだった》2023/05/27
sk
6
不思議な空気感のもとで繰り広げられる奇妙な脱臼に惹かれる。だが単に娯楽として消費してしまっていいものではなく、ここには何か本質的なものが隠れている、そう思わせる重大性をまとっている。2016/10/07
komamono_rimi
1
久しぶりに好きな詩人に出会った。写生。即非の論理。2019/11/24
kentaro mori
1
『雲の行方』を昔読んだ時のことは今だに覚えている。認識することで、言葉になるのか、言葉にすることで、はじめて認識するのか---「金閣でも焼きにゆこうや」---「おじさんは顔じゅう文面だね」---「草がわたしを表現する」---「おれはいつも うつぶせで寝る あおむきながら」2018/03/11
岡部淳太郎
1
変な詩だ。その変な感じは方法によって成り立っている。後半の散文と巻末の詩人論で「明示法」および「写生」ということが頻繁に言われているが、そのような方法で意識的に作り上げられた詩の世界であることは間違いない。自我がほとんど薄れている叙述の中で、静かな思維が流れている雰囲気がある。言葉は平易であるものの、そうした方法のためにやや取っつきづらい面もあるが、再読を促し通りすぎることを許さないものがある。2017/03/05