出版社内容情報
いけばなに触れることは大地に抱かれること。
そして「自分」を整えること。
「いけばな」というと、花の飾り方について実用的なことを
書き連ねなければ、なんて思いがまずありました。事実、僕が
こうして、この書籍を書かせていただいているのも花道家としての
接点から生まれたものです。
ところが書き進めていくうちに、そうした技術的なものは
「副産物」に過ぎず、
自分がいけばなを通じて得たものは、
別のところにあるのではないかと思うようになりました。
ふと立ち止まったときに、前に進む推進力を与えてくれる本。
そういえば小さい頃は図鑑が近くにあったな。
心象を綴ったものやワイン関連の書籍に囲まれていたこともある。
今なら植物関連の本が部屋ごとに目につく場所に置いてある。
いずれも自分の知識欲、好奇心をくすぐり
背中を後押ししてくれるものたちです。
自分の半生を綴ることが誰のためになるのかは、書き終えた今も
わかりません。ただ、その半生をもとに続けてきたいけばなには、
先人の蓄積が多分に織り込まれています。
いけばなという行為そのものは、植物の一生に照らしてみると、
わずか1パーセントにも満たない、人の手で摘まれ断たれたあとの
余生みたいなものでして。
さらに植物の進化、適応の歴史まで鑑みればもう、
ないに等しい存在です。
その余生、わずか1パーセントを100と捉えて、
人のありようを投影してかたち作られ受け継がれてきたものがいけばなです。
いけばなには、人の暮らしと、その何万倍もの命の系譜が
息づいているように思えます。
内容説明
いけばなに触れることは大地に抱かれること、そして「自分」を整えること。
目次
第1章 生まれ/育ち/家族
第2章 ライター駆け出し/いけばなとの出合い
第3章 「いけばな」を伝える
第4章 自然について
第5章 五感の活用
第6章 いけばなとうつわ
第7章 海外で伝えたいこと
第8章 いけばなの粋
著者等紹介
渡来徹[ワタライトオル]
花道家・いけばな教授者/Tumbler&FLOWERS主宰。2012年春、いけばなの面白みを今一度多くの人に知ってもらうべく、渋谷区神宮前にていけばな教室兼オーダー花店『Tumbler&FLOWERS』を始める。編集・ライターとしてのキャリアを活かし、現代に似合ういけばなを提案。18年に神宮前の店舗をクローズし、翌19年に鎌倉市二階堂に活動拠点を移す。レギュラーのお稽古のほか、SNSを使ったレッスンやセミナーなどを開催、店頭や会場での装花、いけばなを入口とした企業セミナーなども行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。