内容説明
庵野秀明の「シン・」シリーズは、「おたく」の歴史を踏まえた自覚的な「つくり直し」である。その方法と美学の出自を探る、挑発的芸術論。
目次
第1章 赤いエッフェル塔の歴史学(ローアングルの鉄塔の系譜学;「映画」的なものをめぐる見えない運動;板垣鷹穂の「映画的」手法;「後衛」たちの鉄塔)
第2章 第3村問題と郷土映画(『シン・エヴァ』に於ける再「物語」化;戦時下に育まれた手塚治虫の映画理論;『海の神兵』と文化映画実装問題;柳田國男のデータベース的映画論;郷土巡礼)
第3章 原形質と成熟(「成長」もアニメ的「動き」と捉える手塚の美学;『シン・ゴジラ』という蛭子譚;「変身」「変形」への執着;エイゼンシュテインの原形質とゲーテの形態学;原形質から生成される人造人間)
著者等紹介
大塚英志[オオツカエイジ]
国際日本文化研究センター教授。まんが原作者。現在の研究テーマは戦時下のメディア理論と文化工作(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
103
視覚表現系アートに対する批評に「構成の美学」がある。どの視点をメーンに作品を構成するかでテーマを明示し、一個の芸術として成立させる表現力か。古代から各分野のクリエーターは常に新しい構成を求めてきたが、著者はエッフェル塔で初めて人類の視野に入った鉄塔建築を見上げる視点からの影響を跡付けていく。政治的要請に応える表現力を認められて写真と映画で実践され、やがて身体的表現の一手段として定着しアヴァンギャルドの原型となり、手塚漫画や庵野アニメに至るまで深く影響しているとする。ただこの論理が正しいか私にはわからない。2022/09/07
Bo-he-mian
15
アマゾンにいくつかレビューが掲載されてたなぁ、と思ったら、いつの間にか全部消えていて衝撃。なんかの陰謀か。評論家・作家(漫画原作者)の大塚英志氏が、庵野秀明監督の「シン・」シリーズを例に【戦後の「おたく」表現のフェティシズムや美学の出自は、戦時下に狂い咲いたアヴァンギャルドが、戦後、政治的にウォッシュされたものである】と主張し、戦前・戦中から今に至る多くの作品と比較し論じる。漫画原作者としての大塚さんはファンだし、かつて「コミック新現実」のような評論も読んだ事はあるけど、本書はちょっと読みづらかった。2022/09/28
スプリント
9
奥が深く、ついていけないところも多々ありましたが興味深いテーマでした。2022/07/16
ポリマー
5
よくわからん2023/08/02
胡適
2
ローアングルからファシズムへ。田園風景から銃後の協働へ。牽強付会とまでは言いませんがちょっと論理が濁ってきている印象。「〜で述べたから繰り返さない」「〜の時代なのが難儀ではある」というパフォーマティブな文体がもはや神通力を失いつつあるのは淋しいことではある(伝染った)2022/05/31