出版社内容情報
かつて国鉄の機関区や客車区といった現場を訪れると、構内の外れにいささかくたびれた客車が1輌、ポツンと留置されている光景によく出くわした。これが救援車である。
災害や事故で本線が不通になると、復旧用の器材や人員を載せて、文字通り救援に駆けつけるのが使命である。反面、輸送が順調なら出番はなく、基地に留置されたままで数カ月から1年以上、全く動かないことも珍しくない。当然ながら、全車が改造車で、2度3度のお勤めを経て、廃車目前の古強者ばかりになる。種車は様々だから、形式は同じでも1輌ごとに外観はバラバラになる。
そんなクセのある車輌には、多くの車輌ファンが関心を寄せてきた。救援車は貨車、電車にも存在し、木造客車にも面白い車輌が多いが、今回は鋼製客車に絞り個性ある車輌の魅力を紐解く。
和田 洋[ワダ ヒロシ]
著・文・その他
目次
1 総論
2 振替車
3 スエ30
4 スエ31
5 スエ32
6 オエ36
7 スエ38
8‐1 オエ61 0代
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えすてい
7
救援車というのは、鉄道ファンの間でも一定の認知はあるものの、ではその実態は何なのかというのは、ほとんど知られていない。車両基地の片隅に置かれている古い客車を改造して暇を持て余してるボロい車両とでも見えるだろうか。1953年の称号規定改正で「ヤ」から新たに設けられた「エ」。本書は鋼製客車改造の「エ」に限定して、その車歴や振替車をたどり、タネ車からどこをどのように改造されたのをたどるものである。今よりもおおらかな時代だったためか、車両基地に入って撮影・計測するのにもそれほどうるさくなかった時代の記録だ。2023/09/30
えすてい
5
実は表紙の車両は、上巻には登場しない。この車両は、下巻で紹介されるオエ61 601なのだ。荷物車では珍しい青15号で塗装されたパレット輸送用荷物車マニ37を改造したオエ61 600番台は3両しかなく、そのトップナンバー。救援車は振替車が珍しくなく、各鉄道管理局や所属車両区が書類上一言一句厳重に管理しているわけでもなく、改造に当たっても付番に当たっても、「アバウトさ」が営業用車両以上に際立っている。それを追うのが、アマチュアであるファンの役目。ファンが追っかけに追っかけて突き止めたデータの蓄積である。2023/10/04
やまほら
1
7月は鉄道ピクトリアルの配給電車特集とこれとは、すごい時代になったものだ。現役時代には、鉄道雑誌の小さなニュース記事でもほぼ見た記憶のない救援車が、上下で2冊の本になるとは。本書でも冒頭で詳しく紹介されている振り替えのような、表に出せない事情があったのかもしれないが。2018/07/28