内容説明
人間の知性を二千年以上も悩ませ続けてきたゼノンの奇怪なパラドックスを我々はどう考え、どう解決すべきか。時間に関する不思議な興味深い諸問題について哲学の立場から深く、鋭く、論理的に考察する。
目次
第1章 「アキレスと亀」の本質の明確化―パラドックスをいかなる状況で考えるか
第2章 「アキレスと亀」の従来の理論の批判―科学、数学、ベルクソンの限界
第3章 「アキレスと亀」の二つの誤り―無限に関する誤りと時間に関する誤り
第4章 「アキレスと亀」の理論的解決―二つの誤りの除去による解決
第5章 「アキレスと亀」の応用的考察―他の運動のパラドックスの解決
第6章 時間は本当に流れるのか―時刻と時間の明確な区別と「私」の存在
第7章 時間は絶対的か相対的か―ニュートンとライプニッツの論争の検討
第8章 時間の方向をどう理解するか―時間とエントロピーの関係の検討
第9章 相対性理論の時間はどこが問題か―アインシュタインの定義の本質と限界
第10章 永遠回帰をどう理解するか―ニーチェの回帰する世界における時間と生
著者等紹介
千代島雅[チヨジマタダシ]
1951年福岡県に生まれる。1980年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得。哲学者
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感想・レビュー
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けんた
1
予想外の名著。かなり掘り下げた議論にもかかわらず平易な表現で書かれていました。ゼノンのパラドックスの他にも時間についての考察が見方を変えて10章まで続きます。8章のエントロピーの話は筆者の誤解からくる独り相撲のように感じられて頂けませんでしたが。2015/09/13
ひらりん
0
哲学と物理学の意外な近さを感じた。前半の「アキレスと亀のパラドックス」の解明部分は、なるほど、と思えて面白い。前提からしっかり整理していかないと、ゼノンの罠にはまることになるのか。後半部、哲学と物理学で時間のとらえ方が違うのは当然で、それぞれに長所短所があるんだろう。だから科学者にもっと優しくてもいいんじゃなかな?2013/06/28