内容説明
敗戦までに海と空で突入した特攻機は、およそ二五五〇機。三九〇〇名の特攻隊員が散華した。国難に殉じた英雄と仰がれるべき彼らは、戦後ながらく一般国民から、悲惨な、あるいは特異な、さらには無意味な戦死者と見なされ続けた―長年にわたる取材と様々なアプローチで特攻隊員たちの真意に迫る一〇篇を収載。
目次
元山空有情―送る者から見た金剛隊員
敵もまた祖国―アメリカでの一五年、日本での九年
死地へ飛ぶ「天山」―特攻戦死ペアへの誤り
本土に空なし―F6Fの射弾が前途をさえぎった
絆は沖縄をはさんで―兄の零戦、弟の「飛燕」
一宇隊、突入まで―隊長機を追う過酷な道
征く空と還る空―運命の分岐点が学鷲を待つ
空と海で特攻二回―はがくれ隊長と振武隊長を務めて
東京上空に散華す―震天隊・幸軍曹機の一撃
桜弾未遂―重爆特攻の空中勤務者たち
著者等紹介
渡辺洋二[ワタナベヨウジ]
昭和25年(1950年)、名古屋に生まれる。立教大学文学部卒業後、航空雑誌の編集勤務。53年、第2次大戦の軍航空に関する執筆に専念。平成22年(2010年)、職業としての軍航空の著述を終了。以後、余暇を航空史研究にあてる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roatsu
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「国難に殉じた英雄と仰がれるべき特攻隊員は戦後長らく一般国民から、悲惨な、あるいは特異な、さらには無意味な戦死者と見なされ続けた。そして戦時中の飛行機乗り即ち特攻隊員とすら思いこまれ実体の殆どが忘れ去られてしまった」というはじめにの一文は戦後日本人の他人事感覚に基づく先次大戦への犯罪的と言える無知、そして戦死した方々への哀悼と敬意の欠如を鋭く突いた問いかけである。陸海軍で五編ずつ取り上げた特攻隊顛末を丹念な取材で詳細に著述し、征った若者達の素顔と真意に可能な限り迫る誠実な作品。渡辺氏の航空戦史著述は徹底し2018/04/12