出版社内容情報
香月泰男の愛妻が没後25年初めて語ったその素顔。溢れる家族愛をファン垂涎の〈母子のシリーズ〉30点とともに綴る。
内容説明
主人は口下手でしたから、シベリヤでの体験は絵で語るしかなかったのではないでしょうか。今日も鮮烈な、戦争の抑留体験を描いた「シベリヤ・シリーズ」の画家・香月泰男を支えたのは、妻・四人の子ども・義母が暮した温かな家庭だった。幼いころ家庭に恵まれなかった画家が、自分の家族に注いだ、無垢で不器用なあふれる愛情。夫一筋に生きてきた妻が、没後二十五年の月日を経、喪失感をのり越えていま語る。
目次
死んだら庭にいてお前たちを見守る
絵を描いてさえいれば満足
主人の喜びが、わたしの喜び
家族をそばに寄せておきたい
主人は人みしりで口下手
花もわたしも張り合いがない
わしはいらん者じゃった
別れた母の編んだセーター
わたしは先生も芸術家も嫌い
賞金は出産費用に消えた〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶんこ
38
シベリアシリーズで有名な画家ですが、何よりも家族を愛した人としての人柄に惹かれたました。画集は大きくて重い立派な物で、最初の序文を読んだのち、これは奥様が書かれた本を先に読んで、人となりを理解した上でゆっくり拝見しようと後回しに。奥様とお子さんたちに甘えきった可愛い香月さんがいました。本に挟まれた絵は黒い絵ばかり。これは木炭を混ぜて描いた絵。不思議な味わいがあって、対象への愛おしさが伝わってきます。亡くなった時は家族の側に居たいから庭に埋葬して欲しいと言い、骨壷を3個用意したご家族。香月美術館へ行きたい。2022/01/31
amnioticfluid
3
香月泰男の妻、香月婦美子さんによる夫の思い出話。親子シリーズの絵をはさみながら、香月泰男の生い立ちや、婦美子夫人との出会い、旅先での話や、亭主関白全開の日々から最期の日までの聞き語りで、映画を一本見たような読後感。2015/11/01