内容説明
心の奥底に咲く花―罪を背負いし生きる者は、その姿を追い求めるのか。私立探偵・畝原シリーズ、待望の最新刊。
著者等紹介
東直己[アズマナオミ]
1956年札幌生まれ。北海道大学文学部哲学科中退。土木作業員、ポスター貼り、タウン雑誌編集者などを経て、92年『探偵はバーにいる』で作家としてデビュー。2001年『残光』で第54回日本推理作家協会賞長編部門を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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岡 幸治
10
主人公の環境や今の状態が複雑なように「鈴蘭」になぞらえられる一見意味不明の人物の人生・考え方も複雑怪奇。東直己氏の小説が私の心をいつも捉えるのは、場所を北海道に限定していて、しかも現代に近いので夕張に代表される閉塞された近未来の日本の姿を感じさせるところ。後、雪深い地域に対する私達暖かい地域の人間がリゾートチックで見る明るい場所ではなく、常に一つ暗い筆致で描いている所が現代日本の縮図を感じさせる事がこの一冊に限らず氏の本に感じる私のの惹かれる大きな点だと感じた。2014/10/23
尾塚
8
畝原シリーズ。札幌郊外の簾舞でのテーマパークと隣接するゴミ屋敷での問題。そして知人から依頼を受ける高校の恩師の捜索。大きな展開のないので途中でちょっとイライラした感じ。畝原氏の家庭って夫婦それぞれ連れ子での再婚ですが、ほんわかして温かみがありますよね。畝原自身家庭を大事にしているところがいいな。話としてはもっとどんでん返しが好みなんですが、こんな作品もいいかも。タカコさんの最期が印象的でした。2013/11/05
すの
7
このシリーズはもはやファンにしか薦められないだろう。悪く言えば小学生の作文のように、ただ畝原の依頼された調査を中心とした生活を丹念に描写するだけの作品なのかもしれない。こと近作はささやかな家庭を守りつつ。しかしこの普通の生活と、普通に老いていく主人公に魅力を覚えたら、するめのように齧り続けずにおれない。そんな作品。小説としては少しまとまりに欠けるが、本書もしみじみとよかった。綺麗すぎる最後だが、きっと、こんな現実もあるんだろうな。名無しの探偵がちらっとだけ出てた。ニヤリ。ま、これもいいんじゃないかな。2010/08/22
Alice
6
今回は怖い部分はなくすんなり読めた。せつなさが残ったね。かなり前に読んだ『悲鳴』と『熾火』再読することにした。2016/11/20
くみこ
6
シリーズ作品は、一冊だけで充分堪能出来るものと、シリーズを通して読んだ方が楽しめる作品があると思います。「鈴蘭」は後者かな、と感じました。ゴミ屋敷の住人、その近くで手作りテーマパークを営む老人、失踪した高校教師とホームレス。探偵の畝原に依頼された事案はこれらに絡んで、物語は徐々にまとまっていきます。本作だけでは畝原の、少し複雑な家庭事情が詳しく分からないので、畝原自身のキャラクターを上手く掴めませんでした。良き家庭人を主人公に据えた、優しげなハードボイルドタッチの作品でした。2015/09/28