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子ども学(チャイルド・サイエンス)のまなざし―「育つ力」と「育てる力」の人間科学

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  • サイズ A5判/ページ数 293p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784750328843
  • NDC分類 493.9
  • Cコード C0036

出版社内容情報

「子どもは生物的存在として生まれ、社会的存在として育つ」。自然科学・人文科学を横断し、学際的に子どもをとらえる「子ども学」。子どもに関わるすべての人に子どもへの包括的なまなざしを持ってほしい──小児医学の泰斗がやさしい言葉で語りかける。


 まえがき

序章 チャイルド・サイエンス 子ども学へのいざない
 01 子どもは未来 未来はこころ こころは子育て
 02 子どもは育つ 子どもを育てる
 03 子どもはいくつまでか
 04 子どもは多様である
 05 なぜ「子ども学」なのか

第1章 子どもは「育つ」 成長と発達
 01 「育つ」とはどういうことか
 02 「発育」には5つの原則がある
 03 胎児は生まれてからの準備をしている
 04 身長と体重から見た子どもの成長

第2章 子どもの「生きる力」と「守る力」 生命のしくみ
 01 子どもの脳と生きる力
 02 呼吸・循環生理と生きる力
 03 吸啜・嚥下運動と生きる力
 04 消化機能の発達と生きる力
 05 体温を調節して子どもは生きている
 06 生きている状態に必須の内分泌機能
 07 健康を守るしくみとしての炎症と免疫
 08 免疫の働きをつくるもの
 09 赤ちゃんはどのようにして感染から守られているか
 10 母乳の免疫上の役割
 11 母親からの贈り物 常在細菌叢(常在フローラ)
 12 子どもの健康を守る予防接種
 13 免疫の反応が裏目に出たアレルギー

第3章 心と体のプログラム システム・情報論から
 01 子どもをシステム・情報論でとらえる
 02 人間の営みを支える生命のシステム
 03 脳進化と心と体のプログラム
 04 体のプログラムのしくみ
 05 心のプログラムのしくみ
 06 心と心を結ぶコミュニケーションのプログラム
 07 スーパーシステムとしての子ども

第4章 チャイルド・エコロジー 子どもを取り巻く世界
 01 ネグレクト・愛情剥奪症候群の影響
 02 心と体のプログラムを作動させるもの
 03 子どもを取り巻く4つの生態系
 04 子どもは生活環境から大きな影響を受ける
 05 生態系の5つの生態因子
 06 子ども虐待にどう取り組むか
 07 「よい栄養」と「よい情報」の大切さ
 08 チャイルドケアリング・デザインで子どもに「生きる喜び」を

第5章 子どもを「育てる」 保育・教育の原点としての育児
 01 「ヒト」が「人」に育つには
 02 子育ての原点 親と子の絆
 03 赤ちゃんと母親の母子相互作用
 04 生まれたばかりの赤ちゃんに対する母親の行動
 05 母と子が感じ合う母子相互作用
 06 母子相互作用は組み合わされて効果が出る
 07 母乳哺育と赤ちゃん
 08 母乳哺育と母性の確立
 09 母乳はどのようにつくられるのか
 10 母乳は何からできているか
 11 母乳が出ないとき

第6章 子どもの権利 最善の利益のために
 01 人権の歴史
 02 子どもの権利
 03 子どもの権利条約と日本の子どもの問題

 あとがき

あとがき

 (…前略…)
 筆者が「子ども学」という発想を持ったのは古く、次の大きな出来事が関係している。第1は、大学紛争直後の1970年に東大小児科教授に就任し、1971年春、東大再建のため、世界の医学教育、また看護学校長も兼任していたので看護教育も視察するよう、当時の文部省から命じられて世界の代表的な医科大学を訪問したことである。1ヶ月ほどかけて、ヨーロッパ、北アメリカ、オーストラリアの医科大学や付属する看護学部・学校を訪れた。そのときに、指導的な大学では学際的な教育を行なっているのを見て驚いた。従来の解剖学、生化学などの縦割の講義はなく、肝臓の解剖学、生化学などとつなげて討論形式で学ぶのである。
 また、1970年代後半、大平内閣総理大臣によって、21世紀の在り方を考えるため、いろいろな分野をカバーする若手研究者を集め、それぞれのテーマで私的な研究会がつくられた。筆者は小児科医として「家庭基盤の充実」と「科学・技術の歴史的展開」というテーマに招かれて勉強した。これが第2の大きな出来事である。科学哲学にあまり関心を持っていなかったため、後者の研究会は筆者に強いインパクトを与えた。
 21世紀の科学のトレンド、とくに人間に関係する科学のそれは、要素還元論を取り込み乗り越えて、関係学術分野を集めた統合的、包括的な新しいパラダイムの科学になると言うのである。人間は生物的存在であり社会的存在でもあるので、文理融合科学についても話し合った。換言すれば、それは学際的であって「人間科学」(ヒューマン・サイエンス)と呼べる。そんな中で、小児科医として「子ども学」(チャイルド・サイエンス)の体系づけを考えはじめたのである。
 (…略…)
 幸い、2003年には「日本子ども学会」“Japanese Society of Child Science”を設立することができ、年1回学術集会である「子ども学会議」を開催、本年で第5回を迎えた。また、女子系の大学に「子ども学」を冠する講座や教室も増え、その数はゆうに50を超し、100に近いという。そうしたこともあって、従来あちこちで書いたものを書き改め、人生のひとつのまとめとして、私の考える「子ども学」を明石書店から出版することにした。
 「子ども学」としてやらなければならないことは、1989年に「子どもの権利条約」が採択されてからの新しい児童観の確立がまずあろう。そして、子ども問題の解決、さらには子どもの生活を安全に、楽しくできるようチャイルドケアリング・デザインすることである。子どものことを考え、配慮し、安全に安心して、子どもが「遊ぶ喜び、学ぶ喜び、生きる喜びいっぱい」になれるよう、すべてをデザインするのである。したがって、都市計画、教具・遊具などの「モノ」ばかりでなく、教育制度、法律、さらには少子化対策などの「コト」までチャイルドケアリング・デザインしなければならない。
 「子ども学」の考え方を普及し、発展させることが、エレン・ケイの言った「子どもの世紀」を21世紀にこそ実現する第一歩であると考えている。私の「子ども学」はそれに応えるには不十分であり、生物的な偏りがあるが、いろいろとご指摘いただき、より良いものにしたいと思っている。
 (…後略…)

内容説明

子どもは未来である。子どもはやさしさの中で育ち、育てられる。わたしたちは、やさしい社会をつくらなければならない。本書にはそのためのアイディアがいっぱい詰まっています。

目次

序章 チャイルド・サイエンス―子ども学へのいざない
第1章 子どもは「育つ」―成長と発達
第2章 子どもの「生きる力」と「守る力」―生命のしくみ
第3章 心と体のプログラム―システム・情報論から
第4章 チャイルド・エコロジー―子どもを取り巻く世界
第5章 子どもを「育てる」―保育・教育の原点としての育児
第6章 子どもの権利―最善の利益のために

著者等紹介

小林登[コバヤシノボル]
東京大学名誉教授、国立小児病院名誉院長、子どもの虹(日本虐待・思春期問題)情報研修センターセンター長、甲南女子大学国際子ども学研究センター名誉所長、ベネッセ次世代育成研究所所長&チャイルド・リサーチ・ネット「CRN」所長(インターネットによる子ども学研究所)。東京生まれ。1954年東京大学医学部医学科卒業。医学博士。米・英留学後大学に戻り、70年東京大学医学部(小児科学)教授。84年国立小児病院小児医療研究センター初代センター長。87‐96年国立小児病院院長。その間臨時教育審議会、中央薬事審議会、人口問題審議会等委員、また日本小児科学会理事、国際小児科学会会長など多くの政府委員、学会役員を務めた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

メルセ・ひすい

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13-110 赤54★5  東京大学名誉教授が熱い思いで語る!  …子どもは未来である。子どもはやさしさのなかで育ち、育てられる。わたしたちは、やさしい社会をつくらなければならない。ここにはそのためのアイディアがいっぱい詰まっています。。 自然科学・人文科学を横断し、学際的に子どもをとらえる「子ども学」。子どもに関わるすべての人に向けて、子どもへの包括的なまなざしを持つことの大切さを、やさしい言葉で語る。                     2010/07/05

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