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出版社内容情報
バルカン半島の旧ユーゴ内戦(1990-95)のさなかに綴られた、クロアチアの女性作家によるエッセイ。国民=民族的同一性を再生する「忘却と想起のテロル」を暴く、痛切な警鐘の書。
内容説明
ヨーロッパの火薬庫、バルカン半島の旧ユーゴスラヴィアにおける民族紛争のさなかに、クロアチア出身の女性作家が綴ったエッセイ集。民族主義を煽動するメディアのキャンペーン、国民的アイデンティティを再生する「忘却と想起のテロル」、指導者や知識人のプロパガンダを徹底して暴く、痛切な警鐘の書。
目次
1 曖昧な始まり
2 パリンドローム・スキャンダル(最初の教科書;パリンドロームの物語;司祭とオウム)
3 甘美な戦略(嘘の文化)
4 バルカン・ブルース
5 フット・ノート
6 廃墟のなかで(記憶の押収;育ちの良いひとはそんなことは口にしないもの)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Nobuko Hashimoto
20
旧ユーゴを扱ったものを学生と読もうと思っていろいろ探しているのだが、そもそも少ないし、入手困難になっているものが多い。本書はユーゴ紛争以降の歴史の再評価や国に対する態度に見え隠れする嘘や不誠実さを冷静に捉える。クンデラの引用がよく出てくる。本書かドラクリッチの『カフェ・ヨーロッパ』あたりがユーゴの紛争、混乱を内側から見たものとして良いかなと思ったら、彼女らはクロアチアのトゥジマン体制下、「クロアチアの5人の魔女」として攻撃されていたそう。結果、著者はオランダに亡命している。(訳者解題より)2019/10/21
hiroizm
14
なぜユーゴスラビアは1991年から壮絶な内戦の末解体に至ったのか、文学者の立場から考察したエッセイ集。日本に住む身には関係ないことにも思えたが、内戦の原因がチトー死後の権力闘争の中で民族主義者や全体主義者が台頭しデマを拡散し不信を煽った、というこの数年の世相に似ているところにちょっと震撼。民族主義を騙る反知性的バカが政治に絡むとマズことになること、コロナ禍の今ホント染みる。また著者のユーゴ時代の思い出やパリンドローム(逆に読んでも綴りが同じの回文詞)も興味深かった。2021/04/22
micamidica
6
ユーゴスラヴィア人、というアイデンティティが宙に浮いてしまった著者が、ユーゴ内戦のさなかに書き綴った文章。読んでいてとてもつらい作品でした。ユーゴスラヴィアを嗾け、そして見捨てた“ヨーロッパ”に対する怒りも痛いほど感じる。そして、ヨーロッパって概念的なものなんだよな…と改めて気づく。この作品は、クロアチアに市民権をもつ著者の視点からの語りなので、いろんな目線からのユーゴスラヴィア解体について、もっと知っていきたいです。2020/01/17
工藤 杳
1
数年前に来日の話があったので買った本(結局来日はなくなった)。ロシアアヴァンギャルド研究者でもある。 原題の「嘘の文化」ということば、同名の章が描き出す事態は現在も結局なにも変わっていない。フェイクニュース。今また旧ユーゴ・マケドニアのVelesという村がフェイクニュース工場と化していることを想起した。2018/02/19