内容説明
祖先が入植した北海道=静内から出土した斧に始まる文学と思索への旅。辻邦生や須賀敦子の思い出から『苦界浄土』『雲のゆき来』まで。人間=歴史への深切な案内。
目次
1(こころの風景;モノの名について;体重が八貫目だった頃 ほか)
2(辻邦生さんについて個人的に;長い未定の時期(辻邦生)
さようなら、ジャック。 ほか)
3(明晰と、広い視野(加藤周一)
知識人のポジション(林達夫)
異国に生まれなおした人(須賀敦子) ほか)
著者等紹介
池澤夏樹[イケザワナツキ]
1945年北海道帯広市に生れる。埼玉大学理工学部中退。75年から3年間ギリシャに暮らし、以後沖縄に居を移し、現在はフランスに住む。1987年「スティル・ライフ」で中央公論新人賞と芥川賞、『マシアス・ギリの失脚』で谷崎潤一郎賞、ほかにも受賞作多数。現在、個人編集で『世界文学全集』を刊行中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
91
池澤さんのエッセイ集です。最近朝日文庫で「終わりと始まり」の2冊のエッセイ集を読んだばかりですが、これ以前のものがこの本と「雷神帖」に収められています。ご自分が生まれた北海道の祖先のことを書かれたり、父親(福永武彦)の作品について書かれたりしています。また父親の友人であった辻邦生さんのこともかなり詳しく書かれています。いつもながら非常に読みやすい文章で書かれていて私も見習いたい気がします。2023/10/12
ゆき
9
どちらかというと人に関係するエッセイ集らしいです。ピンでは読んでいたものが数本ありましたが、一冊にまとめると相互に補完する部分があって、ふむふむとうなずく部分が多かったです。静かな大地、アイヌに関する部分の割合が多いように思いました。池澤さんの中でそれだけの割合をもっていたのかなと思います。しかし、亡くなった人に関するエッセイが多いです。最近は河出の全集も含めて、書評家として信頼している部分が大きいのですが小説も読みたいです。読者は強欲です。2009/08/09
ぽつねん
3
読みたい本が増えて増えて大変。第二部を読んで、池澤さんが亡くなったら誰が追悼文書くんだろ…と思った。たくさんの人を見送るたびに孤独は増すだろうけど、まだまだ長生きして、文章を読ませてくれよ。2009/07/08
Maumim
2
さらりと読み流す。特筆すべきことといえば、米原万里さんへの追悼文が収録されていること。「南極」の魅力を語ったエッセーも。後の「氷山の南」につながるのだろう。あとは、父への思いをつづる「父との仲と『風のかたみ』」がよかった。2015/12/12
猫のゆり
2
相変わらず端正でかっこいい文章。池澤さんは小説より書評やエッセイの方が好きかも(汗)父・福永武彦との関わりが書かれた文章が多くて嬉しかった。新潮文庫の『忘却の河』の解説を再読して、またじーんときた。辻邦生、日野啓三、石牟礼道子など、読みたい作家もまた増えた。2009/07/30